本研究目的である超音波イメージング用分子標的ナノバブル造影剤を開発するためには、(1)気泡を微小化(ナノバブル化)し、(2)リガンド分子を気泡に標識する必要がある。これまでの成果として、新規界面活性剤であるシクロアミロース修飾界面活性剤(CA-LA)にアニオン性リン脂質(DPPS)およびPEG化リン脂質(DSPE-PEG)を混合させることで、生体環境下においても微小かつ分散安定性の高いナノバブルを調製できるとの知見が得られた。そこで本年度は、肝癌などの肝疾患に対する超音波診断用造影剤を目指して、肝細胞への集積性に優れた分子標的超音波造影微小気泡を開発することを目的とした。 肝実質細胞はアシアロ糖蛋白質受容体が過剰発現しており、末端シアル酸基が消失したアシアロ糖蛋白質のガラクトース残基を特異的に認識することが知られている。そこで、リガンド分子としてガラクトースを標識すれば肝細胞へのアクティブターゲッティング能に優れたナノバブルを調製できると考えた。 まず、アミン末端PEG化リン脂質とラクトースを還元的アミノ化させることにより、ガラクトース修飾PEG化リン脂質を合成し、これをCA-LA/DPPS微小気泡に混合させることでガラクトース標識微小気泡を調製した。その結果、ガラクトースを標識しても生体環境下において微小かつ安定性の高いナノバブルが調製できることが分かった。また、本研究で開発したガラクトース標識ナノバブルは、アシアロ糖蛋白質受容体陽性のヒト肝癌細胞HepG2に対して顕著な集積性が認められた。以上より、肝細胞への集積性に優れた超音波造影ナノバブルの調製に成功した。本研究で開発した超音波診断用造影剤は肝疾患に対する超音波診断法の発展に貢献できることが期待される。
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