研究課題
本研究は、コア末端に極性官能基を導入する独自の分子設計戦略に基づき、高密度に集積した分子集合体への外部刺激印加によるダイナミックな分子運動を誘起することにより、可逆的な液晶相転移を達成することを目的とした。これまで申請者のグループでは、溶液中、酸化還元過程において、らせん骨格を有するオルトフェニレン分子のらせんピッチが伸縮することを見出した。そこで本研究では、液晶のもつ自己組織化能に着目し、液晶状態において可逆的に“分子集合構造の自在な制御”を実現するらせん分子の創製を試みた。平成23年度は、柔軟ならせん状刺激応答分子であるオリゴオルトフェニレンの両末端にエステル基を導入した誘導体を合成し、その相転移挙動と分子集合構造の解析を行った。その結果、長鎖エステルを導入したらせん分子が液晶相を発現することを見出した。この成果は、嵩高いらせん分子が液晶性を発現するという、これまでの常識とは異なる発見であり、液晶分子が可逆的かつ異方的な分子運動を可能にするための重要な知見といえる。平成24年度は、らせん分子の外部刺激応答性の検討に先駆けて、構造類似の円盤状液晶化合物を合成し、その構造解析とデバイス特性を検討した。6個のエステル基をトリフェニレンコアに直結させた新規誘導体を合成し、その液晶挙動を調べたところ、これらの液晶分子が広い温度範囲でヘキサゴナルカラムナー相を示し、そのカラムは基板に依存せず巨視的に垂直配向することを見出した。また、この配向特性を反映し、これらの誘導体は顕著な異方的電荷輸送能を示した。これらの研究を通じて、柔軟ならせん液晶分子が外部刺激により可逆的な集合形態制御を実現するための基礎を築くことができた。
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Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 52 ページ: 1031-1034
巻: 51 ページ: 7990-7993