研究課題/領域番号 |
23750177
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
ZHANG Yuanjian 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (30573555)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | graphene / band-gap structure / doping |
研究概要 |
化学修飾はグラフェンシートの分散性を改良し、その電子バンドギャップ構造を変える。それによって電子化学エネルギーの異なったスキームを利用できる点で非常に重要である。そのためには、グラフェンの集合体を分散することが重要なプロセスである。まず、グラフェンシートをそのシートに化学的に分離分解させる必要がある。その為に、天然鱗片状黒鉛を使ってグラフェン酸化物を合成した。その結果として、他の化合物と酸素を含むグループの簡単な化学反応によって、化学修飾したグラフェンを作ることができた。例えば、通常Nドープされたグラフェンは過去50年間1100℃という高温での熱分解によってのみ合成できるわけだが、本研究では反応の早いNが含まれた分子と還元方法を使うことによって、180℃という温度でこの物質が合成できた。これはグラフェンの骨格に"不純物"を導入するという環境に優しい方法といえる。結果として、グラフェンの電子バンド構造は、上記のドーピング実験後に大きく変わった。例としては、合成されたままのNドープされたグラフェンは酸素還元反応に対して優れた電極媒体活性を見せており、将来的には水素駆動燃料電池がかなり格安になり、私達の日常生活において身近になることに役立つであろう。更に、ボトムアップ戦略からNドープされたグラフェンを作ることに成功した。例えば、通常の方法で窒素原子を黒鉛内の炭素原子に置換した黒鉛類似体である黒鉛窒化炭素は、産業業界からの副産物として容易に得られる。また、分子構造はさておき、グラフェンは半金属なのに対して、黒鉛窒化炭素は興味深いことに半導体なので、黒鉛窒化炭素は光を電気に変えるのに利用できるようになり得る。今後は、形状組織とバンドギャップの技術によって黒鉛窒化炭素の活性の改良を目指していくことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
反応性炭素テンプレートから湿式化学反応でNドープ炭素を合成し、酸素還元(ORR)触媒が得られ、いろいろな形状と反応性をもつ同様のN含有化合物を得るという目的を達成した。CoやFeの遷移金属を利用した湿式化学合成によれば、さらに優れた触媒を得る可能性も出てきた。このCテンプレートと湿式化学合成によるNドープORRは低温で作動し、現状の高温タイプより優れており、現行の電気触媒にも匹敵する。Nをドープした還元グラフェン酸化物(rGO, ≤1wt %)はnタイプとpタイプの中間的なバンド構造を持っていて、陽極にも陰極にも利用できる触媒であり(Ag/AgCl 0.4Vバイアスで300%の陽極光電電流)、この点でも十分に目的を達成した。半導体が層状になろうとしている時に、開発材料は層間添加剤として期待できる。すなわち、2次元材料との組み合わせに最適である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のNドープグラフェンを燃料電池として応用するとき、合成時の酸素欠陥(10wt.%)が問題となる。理論的には、素早い酸素還元(ORR)機構が電流を支配することが分かっているので、注意深く還元を行い、触媒の電気伝導を増加させる等により、さらなる低温最適化を行わねばならない。グラフェンを半導体に応用することを考えると、本研究の化学的手段の合成方法によるグラファイト状端窒化物が、異なるサイズ、形状やエッジ組織で作られることは重要である。層状の半導体のバンド構造を変えることができるのも大変に興味深い。このような成果をふまえ、さらに実験で物性解析を深めるとともに、物理的手法も含めてバルクで均一なグラフェンを合成することにも挑戦する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究計画にそって、実験用の消耗品である試薬と実験器具を購入する。
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