研究課題/領域番号 |
23750178
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩輔 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70415686)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生物有機化学 / 核酸 |
研究概要 |
本研究では最終的に疾病の診断やテーラーメイド医療への応用を目指して、生体内の微量RNAを配列特異的に検出・定量し、細胞内外からの刺激に応じた小分子RNA(microRNA)の細胞内挙動を明らかにすることを目的としている。平成23年度は5-ホルミルウリジンと特異的に反応する、新規ヌクレオシド誘導体のデザインと合成を行った。まず、ヘテロ環骨格を持つ誘導体として、ピリジン骨格を有するアミノチオフェノール試薬の合成を試みたが、これまでのところ目的とする試薬が得られていない。合成過程の化合物の安定性に問題があると考えられるので、異なる合成法での試薬合成を検討しているところである。また、新規合成法はその他のヘテロ環、環拡張誘導体にも対応可能なものを検討中である。同時に蛍光波長の長波長化を狙い、共役系の延長について検討した。共通前駆体を合成し、種々のカップリング反応による共役延長型試薬の合成を現在試みている。また、種々の試薬合成前、あるいは後にこれをヌクレオシドへと導入する必要があるが、その結合部位として、ヌクレオシドの水酸基だけでなく塩基部そのものを試薬の構造にすることについて検討した。塩基部に導入することにより、本研究の独創的部分である、核酸二重鎖構造の不安定化が起こりやすくなる可能性があると考えられる。ヘック反応を用いたグリコシド結合形成を検討した結果、望みとするC-ヌクレオシドをβ-選択的に得ることができた。現在チオールの導入を検討中である。一方でオリゴヌクレオチド中の5-ホルミルウリジンに対する反応性を評価するために、化学的に5-ホルミルウリジンをオリゴヌクレオチド中に導入するためのユニットの合成を行った。ヌクレオシドでの評価を行った後、オリゴヌクレオチドを合成し、その評価に入る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は主に化学合成による5-ホルミルウリジンと特異的に反応する、新規ヌクレオシド誘導体のデザインと合成を行った。本来ならば、ヌクレオシドでの評価をもう少し行いたいと計画していたが、当初の想定よりも新規ヌクレオシド誘導体の合成に時間がかかってしまい、やや計画よりも遅れていると評価している。その理由として第一に想定していた化合物の安定性・反応性に問題があるためと考えられる。安定性の問題はヘテロ環を含む誘導体に見られた。現在は合成ルートを変更し、種々のヘテロ環に応用可能な合成法を検討している。また、ピリジンやピリミジンなどのヘテロ環ではその電子不足の性質のため、試薬合成後に5-ホルミルウリジンとの反応性が低下することが懸念される。そこで、同時に共役系を延長した誘導体の合成に着手したが、チオール基を導入した後での共役部分のカップリング反応が進行しなかった。現在、他の合成法での共役系延長型誘導体の合成を検討中である。第二にヌクレオシドへの導入の難しさが挙げられる。ヌクレオシドの水酸基への直接的なアリール基の導入はこれまでのところ、ほとんど行われていない。そのため、上記の試薬合成と同時に進行するのが困難であると考え、塩基部への導入を新たに考案し、検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はまず、早急に数種類の試薬合成と5-ホルミルウリジンとの反応、評価を行う。また、塩基部への導入が達成できそうなので、まずは塩基部へ試薬部位を導入したヌクレオシドをDNA合成機によりオリゴヌクレオチドプローブに結合させ、合成したオリゴヌクレオチドでの評価を検討する。その後、オリゴヌクレオチドでの反応性を評価して、最適化条件の検討を行う予定である。同時に化学合成による新規試薬の合成法確立も行い、他のオリゴヌクレオチドプローブの評価についても順次行って行く予定である。また、当初の計画通り反応後連結したオリゴヌクレオチドプローブを精製し、ターゲットとなるRNAとの50%二本鎖融解温度 (Tm 値) を測定し、その不安定化効果について見積もる。また、同時にミスマッチ塩基対を含むRNAとも比較することで一塩基ミスマッチを見分けるか否かも検討する。さらに最適なものについて触媒回転効率を検討する。最終的には生細胞を用いてその特異的なRNA検出を蛍光顕微鏡を用いて試みる。細胞内へのプローブ導入は広く用いられているトランスフェクション試薬を用いることで、プローブの汎用性を確認する。まずは、細胞内に恒常的に発現しており、生成量の多い、rRNAに対する有効性を評価し、続いてmRNAを標的とする。この際にもプローブの配列や長さについて検討が必要であると考えられる。最終的には細胞内の微量microRNAの検出を行い、その細胞内挙動について明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の残金分552302円については平成23年度に実施した新規ヌクレオシド誘導体の合成のための物品費の支払いに使用する。
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