研究課題/領域番号 |
23750180
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
萩原 伸也 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80373348)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 架橋性核酸 |
研究概要 |
遺伝子発現を人工的に調節する方法は、遺伝子解析から得られた情報を実際の医療や生命現象の解明へ繋げるうえで、無くてはならない基盤技術である。申請者は、その一つとして、標的のRNAと二本鎖を形成することにより架橋反応を起こす機能性核酸を用いた転写後調節法の開発を行った。RNAの2’位水酸基にMe基を導入した2’-OMe RNAは、相補的な配列のRNAに対する高い結合性と、ヌクレアーゼに対する抵抗性を併せ持っている。この2’-OMe RNAに申請者の開発した反応性核酸塩基2-amino-6-vinylpurine (AVP) を組み込んだオリゴ核酸は、相補的な配列を持つRNA上のU塩基と架橋反応を起こす。この反応は酸性条件下でしか進まないと考えられていたが、申請者は最近、AVPの前後の塩基配列を調節することで、RNAとの架橋反応を中性条件において高効率で進行させることに成功した。本年度は、本架橋性核酸によるリボソーム阻害効果の評価を行った。ホタル由来ルシフェラーゼ (luc) のmRNA上の翻訳領域に相補的な配列を持つ架橋性オリゴ核酸 (CFO1) を合成し、luc mRNAと中性条件下で20時間混合することにより架橋形成させた。このmRNAに対しRabbit reticulocyte lysateを加えてin vitro翻訳反応を行い、ルシフェラーゼ活性を測定したところ、未処理のmRNAと比べて1%以下にまで活性の低下がみられた。CFO1はmRNAと等量程度で強く阻害するのに対し、AVPの代わりにAを有する2’-OMe RNAはmRNAに対して100倍量加えても大きな阻害効果がみられなかった。これらの結果は、本架橋形成がリボソームによる翻訳を強力に阻害することを示している。以上のことから、本架橋性核酸は遺伝子発現を抑制する強力なツールとして極めて有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において本年度は、架橋性核酸の新規ルートによる合成、ルシフェラーゼを用いた評価系の構築、細胞外架橋形成効果の検証の実施を目標としていた。研究実績の概要に示したように、おおむねこれらの項目を達成したため区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内評価用ベクターと反応性核酸を細胞へ同時にトランスフェクションし、細胞内架橋形成で起こる「miRNA結合サイトのマスキングによる翻訳活性化」を評価する。ここで検討すべき課題として、「反応性核酸の導入法」「反応性核酸の細胞内安定性・反応性」の2点が挙げられる。核内で合成されたmRNAは、様々な修飾を受けながら細胞質へと運ばれ、翻訳へと至る。この間、多くのタンパク質がmRNAに結合している。従って、反応性核酸がmRNAと架橋を形成するためには、「どこで、どのタイミングで反応するか」すなわち反応性核酸の局在が極めて重要となる。このため、リポフェクション・エレクトロポレーション・マイクロインジェクション・マグネトフェクション等の中から最適なトランスフェクション方法を検討する。さらに、将来の実用化を見据え、2’位に電荷や疎水性基などの化学修飾を加えることにより、トランスフェクション試薬を必要とせず単体で細胞導入可能な反応性核酸の開発も並行して進める。また、現段階でAVP導入2’-OMe RNAが標的RNAと完全に架橋を形成するのに要する時間は、数時間程度である。これを本手法に最適化するため、AVPの前後配列の検討を改めて行い、架橋反応性を調整する。その結果次第で、申請者が別途開発した反応性核酸を用いることも考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり、平成23年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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