本研究は、生体分子間相互作用観察装置に外部から力を加えることのできる装置を組み合わせ、センサー上で形成させた生体分子複合体に外部から引っ張る力を加えたときの挙動を観察することを行い、機械的に動く複合体の力学特性を明らかにすることを目的とする。具体的には、分子間相互作用を観察しながら同時に生体分子複合体に磁場による張力を加えることのできる装置を開発を検討し、基板上で酵素などの挙動をモニターしながらメカニカルに動く分子の”力”を測定することを期待した。 本年度は、アクセスしやすいように従来のバッチセル型とは異なるフローセル型に改良した生体分子間相互作用観察装置である水晶発振子装置を活用し、メカニカルに動く分子の例としてアミノアシルtRNA合成酵素のアミノアシル化反応の挙動や、RNA鎖の中で低分子化合物が結合すると構造変化することが知られているリボスイッチの構造変化の観察を行い、それぞれ水晶発振子基板上で反応が進行することや動力学解析ができることを確かめた。ただし、外部から力を加えるために分子に磁気ビーズを結合させ大きな電磁石で磁場をかける試みを行ったが、水晶発振子のシグナルが安定せず分子の挙動をモニターすることが困難であったため定量的な力測定の達成までには至らなかった。原因として観察装置と力印加装置が共に電磁気的であったためとも考えられたため、観察系を光学系の装置を用いることも並行して検討し、全反射顕微鏡を用いた生体分子の観察システムの構築を検討したところ、基板上の脂質二分子膜内の膜タンパク質が流動する様子を観察することができた。今後はこうした光学系観察装置と磁場発生装置を組み合わせることを検討する。
|