α- ヘリックス構造は、タンパクの機能発現部位に最も多くみられる高次構造の一つである。そこで安定なヘリックス構造をとるペプチドを合成、すればタンパクと生体分子との相互作用を、ペプチドとの相互作用へ還元することが可能である。当該研究者は、クロスリンク剤を用いて安定な短鎖ヘリカルペプチドを構築する手法を確立している。本研究において安定なヘリックス構造を有する短鎖ペプチドに光反応部位を導入し、バイオツールとしての応用を目指すことにした。 以前、DNA 結合性タンパクの結合ドメインをモチーフとした架橋ヘリカルペプチドを作製した。このヘリカルペプチドは、オリジナルのタンパクに匹敵する結合能と基質特異性を示す。そこで、架橋部位として代表的なフォトクロミック色素であるジアリールエテンを用いて、光応答性架橋ヘリカルペプチドとDNAとの相互作用を光制御することにした。 2012年度において、ジアリールエテン骨格が閉環構造を取る場合、安定なヘリックス構造が維持され、光照射によって開環構造へと異性化するとヘリックス構造が不安定化されることがわかった。光応答性架橋ヘリカルペプチドとDNAを相互作用させた際、水晶発振子マイクロバランス(QCM)を用いて解析したところ、相互作用が光制御されることをリアルタイムで観測することに成功した。また、ジアリールエテンを骨格とする非天然アミノ酸を合成し、短鎖ペプチドの主骨格に光反応部位を導入することにも成功した。現在、光ラベル化部位であるジアジリンを導入した架橋ヘリカルペプチドを開発中である。
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