研究課題/領域番号 |
23750188
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高岡 洋輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80599762)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タンパク質 / ケミカルバイオロジー / リガンド / 化学修飾 / 自己集合 |
研究概要 |
ラベル化剤のみで自己集合し、タンパク質に認識されて会合体が崩壊する「適度な自己集合性」を利用して、これまでに細胞内で適用出来なかった反応活性な反応基を、水中で保護してタンパク質修飾に用いる。これによって、リガンド指向型ラベル化の特異性に加え、迅速なラベル化速度を有する新規ラベル化剤を開発することを第一の目的として研究を進めてきた。本系で確立されたラベル化法を、Chromophore-assisted light inactivation(CALI)法に応用することで、細胞内在性タンパク質の時空間的な活性制御を目指す。 モデル標的タンパク質として、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を選択し、各種活性エステル型ラベル化剤の合成を検討した。様々な活性エステル型ラベル化剤を検討した結果、DHFRに対して水中で最も効率のよいラベル化反応基を見いだすことに成功した。本反応基はそれ自体が疎水性であると同時に適度な活性を有することから、水中である程度加水分解が抑制され、タンパク質に認識されると同時にタンパク質表面のアミノ酸と求核反応を起こすことが出来る。さらに、このラベル化部位を有し、様々なプローブ構造を検討した所、ビオチンのような親水性プローブでは、ラベル化と同時に、副反応である加水分解が進行することが明らかとなった。一方で19F-プローブやクマリン等の疎水性プローブを配置すると、このラベル化剤群は会合することで、その加水分解がやや抑制されることを見いだした。 現在はさらなる自己集合性のコントロールに加え、本系で開発されたラベル化剤の、夾雑系での有用性を検証している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
適度な自己集合性と、迅速なラベル化速度を有する、特徴的なラベル化剤の開発に成功した。これらラベル化部位の選定が、本申請では最も重要なハードルの一つであると考えており、この点についてある程度課題を達成出来たと考えている。一方、現在は標的タンパク質が1種類のみに限定されており、さらなる一般性を主張する、あるいは夾雑系で本系が有効であるか、また実際にCALI法に応用して、タンパク質の光不活化を行なうなど、未検討の課題もいくつか残されているため、今後ますますの検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られたラベル化剤について、さらなる自己集合性の厳密なコントロールを行なう。それに伴い、会合することで加水分解が抑制され、認識されて初めてラベル化反応が効率よく起こるラベル化剤構造の最適化を行う。さらに、実際に細胞内に存在するDHFRの不活性化を、CALI法によって達成する。この段階で、細胞実験におけるラベル化条件、光照射時間などを最適化すると同時に、本手法を内在性タンパク質に適用するため、葉酸レセプターやFKBP12など哺乳類細胞内在性タンパク質に適用するため、ラベル化剤を新たに設計・合成する。我々は、リガンド部分の疎水性の変化に応じて、リンカー部分の親水性の調節で自己集合性のチューニングが可能であることを確認しており、これらの知見を活かしつつ新たに内在性タンパク質を標的とするラベル化剤を開発し、任意のタイミングで内在性タンパク質を不活性化の細胞内への影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するための消耗品として、各種合成試薬などの試薬類、フラスコ類などのガラス器具類、プラスチック器具類、一般・培養試薬類、蛍光顕微鏡や光照射器の光学部品が必要とされる。特に多くを占めるのは試薬類であるが、本研究を達成するためには試行錯誤が必要と考えられ、様々な反応基、リガンド分子、リンカー分子などを網羅的に試行する上で欠かせないため、 必要量を使用する計画である。光学部品については、イメージングの際に最適な干渉フィルターや対物レンズが必要となるため、研究費を使用する。また、論文英文校閲費を謝金等として計上し、研究成果の発表に必要な旅費及び発表論文の印刷料を計上した。
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