研究課題
一般的に、溶液中フリーの蛋白質分子同士の分子間電子伝達反応では、その電子移動反応が起こる際にそれら蛋白質同士で瞬間的(半減期:~μ秒)に準安定な複合体を形成し、その短いタイムスケール中に様々な電子移動メカニズムに関わる反応・変化がそれぞれの蛋白質内で起こることが知られている。しかしながら、その半減期の短さから複合体状態のままで詳細にそれらの反応を解析・追跡することが困難とされる。本研究では電子伝達パートナー分子同士を人工的に共有結合で結ぶことで安定な複合体を構築し、その複合体のX線結晶構造解析と電子移動反応速度論的解析を行う事で、これまで未知であった“蛋白質複合体形成時に起こる電子伝達反応メカニズム”について新しい知見を得る事を目的とした。本年度は最終年度にもあたり、新たに新規な天然融合型電子伝達蛋白質の構造機能解析ならびに新規な過渡的電子伝達蛋白質複合体の構造解析を行い、さらにそれら結果と一昨年度から蓄積した研究結果を併せて検討し本研究の総括を行った。その結果、全体を通して、分子間電子伝達反応に関するいくつか重要な知見が得られたので、その概略について述べる。まず1つめに、人工的に分子同士を繋ぐ場合、不適切な設計で人工的に複合体を作成すると予期せぬ分子間相互作用および立体構造変化が見られ、それら結果を直接、本来の機構にフィードバックすることは不可能であった。すなわち、リンカーの長さならびにダイナミクスが相手分子の配向ならびに複合体立体構造に大きく影響を及ぼす事がわかった。また、3種類の天然融合型酵素の立体構造と機能について比較解析した結果、酸化還元に伴いダイナミックに分子間相互作用変化を起こすことで電子伝達反応を制御する新機構の存在を示唆させた。これらの新たな結果は、学術的に非常に有意義であり、これまでに学術論文として6報発表し、さらに2報、投稿準備中である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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