研究概要 |
本研究課題では、放射線治療に用いるX線の照射線量を下げるべくポルフィリン金属錯体をX線増感剤として用いたX線増感型放射線治療を検討している。 本研究では、X線増感剤の候補薬剤としてグルコース連結ポルフィリン金属錯体(金属錯体)27種類を合成した。合成した金属錯体についてラット正常胃粘膜上皮細胞株(RGM-1)及びMNNG添加により得られた胃癌様変異株(RGK-1)を用いたX線増感試験を行い、中心金属(H2, Zn, Pd, Pt)、置換基(S連結、O連結、triazol環)および置換数と位置(1, cis-2, trans-2, 3, 4)についてX線増感能を比較した。また金属錯体の副作用となる光細胞毒性能を抑制するためにα-トコフェロールを共存させた系についても検討した。 X線増感試験は、RGM細胞株及びRGK細胞株(1×10^4 cells/well)に5 μMの金属錯体を24時間接触後、X線15 Gy (Al, t 0.5 mAl, t0.5 mm filter, 5 mA, 130 kV)を照射し、照射24時間後WST-8アッセイにより細胞生存率を求めた。 X線増感試験の結果、ほぼすべての金属錯体はRGM細胞株よりもRGK細胞株に高い取り込み量と高いX線増感効果を示した。中心金属を比較したところ、高いX線吸収効率を示すと推測された白金体が最も高いX線増感効果を示した。一方、糖の置換数や連結部位による殺傷効果の違いは見られなかった。また、α-トコフェロールを100 mM共存させることで、金属錯体の副作用である光細胞毒性能を止めることに成功した。 以上の結果、開発したグルコース連結ポルフィリン白金錯体がX線増感剤として期待でき、新たな放射線治療法の可能性が示唆された。
|