研究課題/領域番号 |
23750197
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
加藤 太一郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (60423901)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ホタルルシフェラーゼ / チオエステル化 / 立体選択性 / 補酵素A / 結合部位 |
研究概要 |
発光反応を触媒する酵素として有名なホタルルシフェラーゼは、それとは全く違う立体選択的なチオエステル化反応をも触媒できる。しかし立体選択性発現理由の詳細や補酵素A(coenzyme A)結合部位など、未だ解明されていない部分もある。そこで本研究では、(1)補酵素A結合部位および構造変化に必須のアミノ酸残基を明らかにすること、また得られた情報を基に(2)立体選択性が発現する理由を解明することを目標とした研究を行うことを計画している。 本酵素はアシル-AMP形成酵素スーパーファミリーに属しており、アシル-AMP中間体を経由する2段階反応にてチオエステル化が進行する。申請者はこれまでに、カルボン酸基質としてケトプロフェンを用いたX-線結晶構造解析を進め、本基質のアシル-AMP中間体アナログとヘイケボタル由来ルシフェラーゼ(LUC-H)との複合体像取得に成功している。しかし得られた構造から補酵素A結合部位を特定することはできていなかった。 そこで本年度はまず、チオエステル化活性発現に必要なアミノ酸残基の特定を行うことを目指した。本目標を達成するために申請者は、チオエステル化段階の構造が既に明らかにされているアセチル-CoA シンセターゼの立体構造情報を利用した。本酵素とLUC-Hは高い構造類似性を示した。そこで、それぞれの酵素のドメインごとの構造や補酵素Aとの距離情報を比較することによってLUC-H中に潜むチオエステル化活性発現に重要なアミノ酸残基を予想、これらの部位へのランダム変異体ライブラリーを得た。得られた変異体についてケトプロフェンに対するチオエステル化活性および発光活性を測定した。その結果、発光活性は保持しながら、チオエステル化活性にのみ影響を与える部位を複数ヶ所見出すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は類似酵素の立体構造情報を基に、ホタルルシフェラーゼにおけるチオエステル化活性発現に必要なアミノ酸残基の特定を行うことであった。検討を進めた結果、チオエステル化活性に影響を与えるアミノ酸残基として10ヶ所を超える部位を見出すことに成功した。よって本年度の目標は十分に達成できたと評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の検討によって、チオエステル化活性発現に必要なアミノ酸残基を複数部位特定することができた。そこで来年度以降は、特定されたアミノ酸部位が補酵素Aの結合とドメイン構造変化のどちらに関与しているのかを明らかにすることを目指す。具体的には、特定されたアミノ酸部位が、補酵素Aの結合とドメイン構造変化のどちらに関与しているのかを明らかにするために、得られた変異体を用いた速度論解析を行う。補酵素Aに対する速度論パラメータを野生型酵素と比較することによって、どちらの要因によって酵素活性が変化したのかを明らかにする。また、デヒドロルシフェリル-AMPに対する発光阻害を指標とした活性測定も行う。これら2種類のアッセイ結果を総合することによって、それぞれの部位がチオエステル化段階においてどのような役割を担っているのかを明確にする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、本年度にATTO社製 ルミノメータAB-2200(1270千円)を購入する予定であったが、共同研究先より貸与することができたため、本経費に掛かる部分について来年度以降に繰り越すこととなった。本資金のうち一部は、次年度(平成24年度)カナダにて開催予定の国際学会(ISBC2012)における成果発表旅費として利用する予定である。その他残金については来年度以降の物品購入費用に利用させていただく予定である。
|