発光反応を触媒する酵素として有名なホタルルシフェラーゼは、それとは全く違う立体選択的なチオエステル化反応をも触媒できる。しかし立体選択性発現理由の詳細や補酵素A(coenzyme A)結合部位など、未だ解明されていない部分もある。そこで本研究では、①補酵素A結合部位および構造変化に必須のアミノ酸残基を明らかにすること、また得られた情報を基に②立体選択性が発現する理由を解明することを目標とした研究を行った。 これまでの研究では、まず初年度にチオエステル化活性発現に必要なアミノ酸残基の特定を行った。その結果、チオエステル化活性発現に強い影響を与える部位を複数ヶ所見出すことに成功した。2年目にはこれらアミノ酸部位の役割を明らかにすることを試みた。具体的には、各種変異体に対して速度論パラメータを測定した結果、その違いが、申請者が当初予想した補酵素Aの結合とドメイン構造変化のいずれかを示しているということが示唆される結果を得た。 上記のようにこれまでの検討によって、チオエステル化活性発現に必要なアミノ酸残基を複数箇所特定し、それらの部位のランダム変異体について速度論パラメータを得ることができた。また、それらの部位の働きは少なくとも2種類に分類されることが分かった。そこで最終年度は、特定されたアミノ酸部位が補酵素Aの結合とドメイン構造変化のどちらに関与しているのかを明確に区別することを目指した研究を行った。また、これら残基が、ルシフェラーゼのもう一つの触媒活性である発光活性にも影響を与えるのか、2つの触媒活性の関係についても予想した。
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