研究概要 |
本課題の目的は、組換え大腸菌より数百グラムスケールにて生産可能である2-デオキシ-scyllo-イノソース(DOI)を鍵原料に、高効率的・系統的なカルバ糖の合成法を確立して、カルバ糖を有する擬似糖鎖を構築することである。そのために、平成24年度は以下に示す3つの課題に取り組んだ。 (1) DOIから合成した6-O-Ac-カルバ-β-D-グルコースの有する4つのエクアトリアル位のOH基に対してピバロイル化反応を試み、ヒドロキシ基の部分保護反応を検討した。その結果、-20℃にて反応を行うと1,3-di-O-Piv体が主生成物として得られることが判明した(65%)。一方、80℃にて反応を試みると主生成物はtri-O-Piv体となり、1,2,3-Piv体、1,3,4-Piv体、1,2,4-Piv体の収率がそれぞれ35%, 21%, 21%となることがわかった。これらの部分保護体より5a-カルバ-β-D-ガラクトース、5a-カルバ-β-D-マンノース、5a-カルバ-β-D-アロースの合成を達成した。 (2) 上記 (1)にて得られた6-O-Ac-1,3-di-O-Piv体の2位OH基にTf基を導入後、4位のOH基をアセチル化し、最後にNaN3にて2位のアジド化を試みた。次いでアジド基をアセトアミド基に変換し脱保護することで、5a-カルバ-N-アセチル-β-D-マンノサミンの合成を達成した。 (3) DOIより10グラムスケールで合成したカルバ-β-D-グルコースを原料に1位に活性基を有するカルバグルコース供与体(Ts体、CMs体、Tf体)を合成した。またカルバ-β-D-グルコースの4位と6位をベンジリデン基で保護後、1位から3位OH基をベンジル化し、次いでベンジリデンアセタールの還元開裂反応を試みた。その結果、4位もしくは6位にヒドロキシ基を有するカルバグルコース受容体を合成できた。
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