-多くの蛋白質や核酸が立体構造を形成する過程では、分子内の様々な相互作用が段階的に効率よく形成されており、分子内の2点間が衝突する運動は生体分子の複雑な構造形成における最も基礎的な過程であるといえる。特定の構造をとらないペプチド内の衝突速度はよく調べられているが、核酸内の衝突速度に関する研究はあまり進んでいない。そこで本研究では、DNAおよびRNAの両末端間の衝突速度の塩基依存性、鎖長依存性、温度依存性を調べることを目的とした。核酸の両末端に発光分子と消光分子を修飾し、発光寿命から発光分子と消光分子の衝突速度を測定した。20塩基を超えるDNAの場合、比較的低温条件下ではポリアデニンのコンフォメーション変化速度が両末端衝突速度に大きく寄与するものの、高温条件下ではこの寄与が消失し、ポリチミジンと同じ速度で両端が衝突するということを明らかとした。同様の測定をRNAについても行ったが、消光分子の有無で発光寿命に明確な差を観測できなかった。
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