研究成果の概要(和文):リン光有機ELデバイスは蛍光デバイスと比べて4倍の効率を実現する。我々はこれまでに外部量子効率30%を実現する水色、緑色および白色の高効率有機ELデバイスを開発してきた。高効率の主な要因は新規に開発したリン光材料、特にフェニルピリジン誘導体電子輸送材料の利用である。しかし、依然として高性能有機ELデバイスを実現する電子輸送材料の分子設計指針は一般化されていない。量子化学計算のひとつである密度汎関数法が分子をデザインする強力な手法として知られているが、計算では真空中一分子の構造と光学特性のみを与える。一方、有機ELデバイスではアモルファス分子ガラスが用いられ、固体状態の特性が高効率デバイスを実現するために決定的に重要である。このような観点から、本研究では、4種類の新規電子輸送材料の(1)量子化学計算による値、(2)合成した材料の物性値、および(3)最終的なデバイス特性の3つの関係性を、特にX線単結晶構造解析から得られたパッキング構造に着目して検証した。これらの検証結果を基に固体状態でピリジンの弱いCH/N分子間水素結合により自発的に組織化しうる新しい分子設計指針を見いだすことに成功した。
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