研究概要 |
①新規に合成した5種類のシロール誘導体のイオン化ポテンシャルなどの基本物性を評価した。その結果、シロールの基本骨格に異なる置換基を用いることで、イオン化ポテンシャルを5.19~6.30eVの範囲で制御することに成功した。また、光学吸収スペクトルではいずれのシロール誘導体も紫外から青色領域に吸収を有することが分かった。 ②青色に選択的に吸収を有するpoly[(9,9-di-n-octylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-(benzo[2,1,3]thiadiazol-4,8-diyl)] (F8BT)にシロール誘導体を添加した有機光電変換素子を試作・評価した。その結果、シロール誘導体のイオン化ポテンシャルと素子の外部量子効率には明確な相関関係が得られ、外部量子効率はシロール誘導体のイオン化ポテンシャルに対して指数関数的に変化する傾向が得られた。また、F8BTに対して低いイオン化ポテンシャルのシロール誘導体を添加すると、外部量子効率とS/Nは共に向上した。特に、イオン化ポテンシャルが5.53 eVのシロール誘導体で最も高い特性が観測され、添加濃度50wt%、26MV/mの電界強度の条件下で最大の外部量子効率は52%、S/Nは4.3×10^4となった。緑色に選択的に吸収を有する有機材料としてRhodamine 6Gを用いて、シロール誘導体の添加効果を評価した。その結果、最大の外部量子効率33%を実現した。 ③フェムト秒ポンププローブ法を用いて、シロール誘導体を添加した有機薄膜のキャリアダイナミクスを評価した。その結果、100ps以上の遅い領域での吸収変化量がシロール誘導体の添加濃度を増やすに従って増加する傾向が得られた。つまり、シロール誘導体の添加で有機層中でのキャリア発生効率向上が示唆された。
|