研究課題/領域番号 |
23750207
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
安武 幹雄 埼玉大学, 科学分析支援センター, 講師 (70361392)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 液晶 / エレクトロクロミック材料 / キノン / チオフェン |
研究概要 |
本年度実施した当研究の成果としは、電気化学的な酸化をビチオフェン部位、還元をアントラキノン部位で行なう液晶化合物を2種合成し、それぞれの液晶性と電気化学的な色の変化について検討した。1つは、降温時120℃で樹状組織を観察した。これは、テトラゴナルのディスコチック液晶相の発現の可能性が示唆されるが、XRD測定からも詳細な同定はできていない。さらに解析を進める予定である。またもう一方は、降温時60~41℃でモザイク組織を観察した。このことからスメクチック相を発現している可能性が示唆されるが詳細なXRD測定による同定には至っていないため、今後の課題である。これら2種の化合物は塩化メチレン溶液において還元側で半波電位E1/2 -1.07 V, -1.54 Vで可逆な酸化還元反応を示した。これはアントラキノン部位のラジカルアニオン、ジアニオンの生成に伴う2段階の還元による挙動だと考えられる。一方酸化側では、明確なピークは観測されず、ラジカルカチオンが不安定であることが示唆された。次いで、ITO電極を塗布したセルに、今回合成した溶液を挟み、-2.0 Vの電圧を印加すると、黄色から赤色への色の変化が観られた。そして、これを0 Vに戻すと、赤色から黄色へと可逆な色の変化を示した。さらに酸化側の色の変化を観るために、3.0 Vの電圧を印加すると、黄色から青緑色への色の変化が観られた。しかし、これを中性状態にするため0 V電位を戻しても色は戻らず不可逆な色の変化のみを示した。この結果は、ラジカルカチオンの安定性が今後の課題と言えるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回、合成した化合物の安定性はよいものの、液晶性についての解析が遅れているのは確かである。若干の設計の見直し等が必要である。また、電気化学的な点では、今回の予算申請で購入して電気化学的アナライザーの導入により、化合物の電気化学的な還元酸化の傾向とそれぞれの化学種の安定性を見ることはできたものの、次年度導入予定のU紫外可視装置が無いため、電気化学的な還元、酸化における化学種を目視による観察のみにとどまっている。しかし、電気化学的な還元においては、化学種が安定であることを証明した。今回の試みは、溶液中におけるものだけであったので、液晶状態での色の変化を次年度以降に行なうとともに、アンモニウム等のユニットを分子骨格に導入することが必要不可欠となってくる。
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今後の研究の推進方策 |
今回合成した化合物の液晶性の解析をX線回折等を用いることで進めるとともに、電気化学的な色の変化を紫外可視装置により行なって行く。併せて、エレクトロクロミズムを発現する液晶化合物の分子設計を見直しを行なう。加えて、アンモニウム等のイオン性部位を分子設計に取り入れ、液晶分子の合成を見直す。今回、電気化学的な測定は、全て電解質溶液に溶解した化合物の測定行っており、化合物そのものの測定は行っていないため、測定をするとともに、色の変化を紫外可視装置で測定を行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記に示したように、紫外可視測定装置の導入により、それぞれの還元電位、酸化電位における化学種の色の確認と経時変化における化学種の安定性に関して検討を行なう予定である。測定の際に特殊な液晶セル(ITO電極を塗布した特殊なセル)を使用する経費今回の結果を液晶学会討論会にて発表するための出張費
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