研究課題/領域番号 |
23750207
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
安武 幹雄 埼玉大学, 科学分析支援センター, 講師 (70361392)
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キーワード | 液晶 / エレクトクロミック材料 / キノン / チオフェン |
研究概要 |
昨年度実施した研究の継続として、電気化学的な酸化をビチオフェン部位、還元をアントラキノン部位で行なう液晶化合物に関して、再度、それぞれ中間相の同定を行った。しかしながら、いずれの中間相も液晶相特有のX線による回折パターンを示していないため、これらの化合物は液晶相を発現していないと結論づけた。そこで再度、分子構造の見直しを行い液晶化合物の合成を行った。前回までは、ビチオフェンユニットにそれぞれ液晶相発現のためのユニットであるジアルコキシベンゼンユニットを導入していたが、今回は直接ビチオフェンに2ヶ所アルキル鎖を有するユニットを2つアントラキノンに導入を行った。 今回合成した化合物の偏光顕微鏡観察からは、この化合物が中間相を示しているか詳細がわからなかったものの、135℃でのXRDから詳細な液晶相構造が確認できた。この構造は、スメクチック相と類似したもので約2.95nmの層を成していることがわかった。 また昨年同様、ITO電極を塗布したセルを用いた素子を作ったが、良好な結果を得ることはできなかった。しかしながら、この化合物を溶液に溶かし、それに電解質を加えた素子を昨年同様作成し、エレクトロクロミズムを調べた結果、-2.0 Vの電圧を印加すると、黄色から赤色への色の変化が観られ、さらにこれを0 Vに戻すと、赤色から黄色へと可逆な色の変化を示した。また、酸化側の色の変化を観るために、3.0 Vの電圧を素子に印加すると、黄色から青緑色への色の変化が観られたものの、これを還元しても可逆な色の変化は観られなかった。ラジカルカチオンの安定性を図るために2ヶ所以上ビチオフェンユニットを導入する予定である。また、これまで溶液を使ったエレクトロクロミズムであったので、イオン性の液晶化合物と今回合成した化合物を混ぜ合わせ素子形成を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、合成した化合物に関して中間相の解析を詳細に行った。解析結果後、これらは何らかの高次の中間相を取っているものの液晶相と言いづらい。再度、分子設計し、合成した化合物のDSC、XRDの解析により、エレクトロクロミズムを発現できる可能性を持つ液晶化合物を得ることができた。また前年度予算申請で購入した電気化学的アナライザーと紫外可視装置の組み合わせにより、前年度まで不確かであった吸収波長のシフト位置を確認することができた。また、ここで得られた吸収波長より、色を発現している化学種の特定を分子化学計算と併せて予想している。 今回までの試みは、溶液中でしかエレクトロクロミズムを確認できなかったが、今後イオン性の液晶化合物との組み合わせ、アンモニウム等のユニットを液晶分子骨格に導入していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今回合成した化合物とイオン性の液晶化合物の組み合わせにおける素子形成によるエレクトロクロミズムの発現の確認を行うとともに、アンモニウム等のイオン性部位を分子設計に取り入れ、液晶分子の合成を見直す。併せて、エレクトロクロミズムで発現した色の吸収帯のシフト位置を紫外可視装置で測定を行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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