研究課題/領域番号 |
23750208
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中村 一希 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (00554320)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | デュアルモードディスプレイ / 発光性希土類錯体 / エレクトロクロミズム / 励起エネルギー移動 |
研究概要 |
本研究は、単一素子内で発光型表示、反射型表示が可能な新規デュアルモードディスプレイ材料の創製を目的としている。素子の発光型表示部位には強発光性の希土類錯体を、反射型表示部位には電位印加により可逆的な画像形成が可能なEC分子を用いることで、EC反応による光の吸収波長変化に基づく発色on-off制御を行うと同時に、錯体内の発光中心である希土類イオンからEC分子への励起エネルギー移動を制御し、発光制御が可能と考えられる。 発光材料であるEu(III)錯体と、発色材料であるヘキシルビオロゲン(HV2+)の混合溶液を用いた素子では、混合溶液への電圧印加によるHV2+のEC反応に伴い、透明から青色への明瞭な色変化が観測された。Eu(III)錯体を光励起下では、透明状態ではEu(III)に特有の強い赤色発光が観測されたが、HV2+着色状態ではその発光が完全に消光した。このように、Eu(III)錯体の発光を電気化学的に制御できることを実証したが、その発光、吸収の十分な変化には100秒~1000秒という長い時間の電圧印加が必要であった。また繰り返し安定性にも問題が見られた。これらは、素子内の電気化学反応における酸化と還元のバランスがとれていない事が原因と考えられたため、無機のEC材料として知られるプルシアンブルー(PB)膜をHV2+の対極反応材料に用いた素子を作成した。その結果、HV2+とPB膜の相補的な酸化還元により、素子の発光・吸収の応答が10秒以内に完結し、飛躍的な応答性の向上を実現した。また、200回の繰り返し測定後でも特性の低下が見られなかった。以上、本年度は新規デュアルモードディスプレイ材料の実証と、電気化学反応の最適化による素子特性の向上を達成した。 本成果は、国際学術誌やPCT出願、新聞報道等により発信し、国際会議での優秀ポスター賞や千葉大学優秀発明賞の受賞等の評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は。研究の最終目的である新規デュアルモードディスプレイのプロトタイプ素子の駆動実証と、電気化学反応をコントロールすることでその素子特性が向上しうることを見出した。研究成果の発信に関しても、国際学術誌、国内外での学会発表、新聞報道、特許出願など様々な面から行なっており、現在も国際学術誌へ投稿、査読中であることなどから、目的に対して概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、発光、発色を示す材料の高機能化、多色化への展開を推進してゆく。手法としてはデュアルモードディスプレイ材料の単一分子化、無機-有機ハイブリッド化による発光・発色材料の実現を行なってゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記、材料の高機能化に向けて必要な材料合成用試薬、各種測定における消耗品の購入、学会発表等の旅費としての使用を計画している。
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