研究課題
本研究課題は,有機単結晶の清浄表面上に創製した高秩序ヘテロ界面の価電子バンド構造を角度分解光電子分光法(ARPES)により実測し,有機エレクトロニクス素子の特性を支配する界面接合部分の電子構造を解明することを目的とするものである。平成23年度には,ドイツの研究グループとの共同研究として,有機電界効果トランジスタのチャネル領域をモデル化した高秩序有機半導体(ルブレン)-誘電体(長鎖アルカン)モデル界面をルブレン単結晶清浄表面上に作製し,界面成長様式を原子間力顕微鏡により,界面電子構造をARPESにより決定した。これは,有機単結晶上のヘテロ界面電子構造評価に成功した初めての例である。以上の成果は専門誌にて公表した(論文1)。平成24年度には有機半導体同士のpnヘテロ界面へと研究対象を進展させた。まず,代表的なp型有機材料の薄膜上に異なるn型有機材料を積層したpn界面の電子構造を体系的に計測し,界面での電荷移動効率が上部n型分子の永久双極子の有無に依存することを示唆する結果が得られた(論文4)。さらに,p型有機半導体(ペンタセン)単結晶上にn型材料(C60)を積層した高秩序有機pnヘテロ界面の電子構造評価にも着手している(学会発表6)。これに関しては,逆積層界面に関する研究も進め,論文発表を行いたい。さらに,反射高速度電子回折(RHEED)装置のマイクロチャンネルプレートによる高感度化も完了した。今後,RHEEDによる構造決定とARPESによる電子構造評価との複合研究を進め,有機pn界面の電子構造と分子間接合様式との1対1対応を可能にする学理構築を目指していく。この他,有機単結晶の2次元価電子バンドのARPES計測から結晶内隣接分子間での異方的な移動積分値の決定(論文3),高秩序ナノ-有機ヘテロ界面への展開を目指した量子井戸-有機分子界面電子構造計測(論文2)も併せて実施した。
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