研究課題
電気自動車やスマートグリッドの普及による省エネルギー社会実現のため、高性能な二次電池の開発が急務となっている。リチウムイオン電池においては、商業化以降様々な正極・負極材料が見出されてきた一方で、電解液材料に関しては顕著な革新はなかった。そこで本研究では、リチウムイオン電池の高電圧化に資する新たな電解液系として、超高濃度有機溶液を検討した。1mol/L程度の塩濃度となる通常の電解液に対して概ね3mol/L以上の超高濃度溶液とすることで、電気化学安定性が大きく向上することを見出した。還元方向(負極側)においては、超高濃度とすることによって、従来必須とされていたエチレンカーボネート(EC)溶媒を用いずに様々な溶媒中で黒鉛負極の可逆作動が可能となることを見出した。これにより、従来EC系に固定されていた電解液設計の幅が大きく広がり、必要とされる特性に合わせた多様な電解液設計が可能となった。更に、酸化方向(正極側)においても、超高濃度溶液とすることによって高い分解耐性を発現することを見出した。以上のような高い電気化学安定性の起源を明らかにするため、実験・理論双方からの検討を行った。その結果、全ての溶媒・アニオンがリチウムイオンに配位するという超高濃度特有の溶液構造を見出し、その構造が酸化及び還元安定化の双方に寄与していることを明確にした。最終年度(平成25年度)には、実際の電池材料への応用を検討し、既に実用化されている3V級正極及び黒鉛負極の高効率での充放電サイクルを確認した。さらに今後実用化が期待されている高電位正極材料の可逆作動も一部の高濃度電解液において実現した。本研究で明らかにした超高濃度電解液特有の電気化学安定性を利用し、従来の電解液では困難であった長寿命と高電圧を両立した次世代リチウムイオン電池の開発が期待される。
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ACS Applied Materials & Interfaces
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10.1021/am5001163
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