研究課題/領域番号 |
23750215
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
江本 顕雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 産総研特別研究員 (80509662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光導電性 / 固体電気化学 / フォトキャリア / フラーレン / 硫化銀 |
研究概要 |
本研究課題「光誘導固体電気化学反応技術の確立」において、研究実施計画に基づき、(1)光導電性と電気化学反応の調査、および(2)反応生成物の電気的・化学的調査を行った。まず、光導電性層として低分子液晶とフラーレン(C60)の混合物、固体電気化学反応層を硫化銀として、電気化学反応セルを作製した。電源内蔵微小電流計をコンピュータ制御してこのセルの光照射時のフォトカレントを測定することで、(1)に関する調査を行った。結果として固体電気化学反応が生じる反応閾値に相当する電流変化を観測することができた。未照射時のダークカレント特性との対比から、硫化銀層内を伝導した銀イオンが、光導電層を伝導してきたカウンタキャリアと結合して銀イオンが還元される現象を間接的に捉えていると思われる。次に(2)の項目に基づき、この反応後の硫化銀層界面を観察し、実際に光照射分布に応じて反応生成物が生じていることを確認した。パターン電極を用いた実験から、光が照射されてかつ外部印加電界によってそのフォトキャリアが伝導した場合に多くの反応生成物が生じていることが明らかになり、本研究の主題である"光誘導固体電気化学反応"の物理的描像を鮮明なものとした。現在、分析装置による詳細な組成分析およびプローバーによる電気的特性の測定を進めている。一連の調査では、スモールバンドギャップ化のために修飾されたフラーレン(PCBM)をドープしたセルも並行して調査しており、次年度以降の調査項目も取り入れて進めている。更に、同様に次年度の検討項目である素子構造のモディファイの一環として、高効率電荷授受電極として色素増感太陽電池分野で用いられているランダム微粒子配列の作製も検討した。結果として微粒子配列秩序を制御可能な新規手法を見出している(次頁論文欄に記載)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初の計画のうち、反応生成物の詳細な元素分析および電気的特性に関する調査が若干遅れているが、調査自体は問題なく進行している。一方で、次年度検討予定の"光導電性材料および素子構造のモディファイ"に関しても一部先行して取り組んでおり、進展の見通しが得られているため、研究全体としてはおおむね順調に進行していると考えられる。しかしながら、研究発表の点では当該年度の成果報告が論文発表1件に留まっており、総合的にはやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
まず、次年度前半には、当該年度に得られた成果の外部発表を行う。同時に、現在取り組んでいる、反応生成物の化学的・電気的調査を進める。同時に当初計画に基づき、本研究の光誘導固体電気化学反応セルを構成する材料および構造のモディファイを進める。これに関しては、当該年度に一部先行して取り組んでいることから、次年度には研究計画に沿って推進することができると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費使途に関しては、当初の計画から変更は無く、試薬・材料等の消耗品および学会・論文発表等の経費として充当する予定である。
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