研究課題/領域番号 |
23750217
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
白井 昭博 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (40380117)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 多国籍 |
研究概要 |
平成23年度研究実施計画では、まず最初に細胞緩衝液系における微生物滅菌条件を決定することであった。微生物(大腸菌、黄色ブドウ球菌、酵母)をPBSに懸濁し、光源として365nmの光を発するLEDを用い、殺菌曲線を作成した。光源部と菌懸濁液との距離、すなわち照射距離を5cmとした場合、残存生菌数を1万cells/mlから10cells/mlとするために60分間の照射を要した。そこで照射距離を2cmにすると、10cells/ml未満とするためには60分照射を要したが、30分照射における生菌率を5cmの場合より1桁下げることができた。この2cm照射距離条件で、他の微生物についても同様に試験した。その結果、60分照射で黄色ブドウ球菌を10cells/ml、酵母を20cells/mlまで減少させることができた。今回の実験では、初発生菌数を細菌では1万オーダー、酵母では1千オーダーとしたため菌が残存したが、1桁低い初発菌数であれば、十分に30分から60分照射で10cells/ml未満にすることができることが推測された。 次に、365nm、照射距離2cmのLED光がどの程度細胞毒性を示すのか検討した。細胞は、ヒト皮膚繊維芽細胞を用い、生細胞率はMTTアッセイにより決定した。その結果、30分照射において生細胞率85%を保持し、60分照射で27%まで減少させることが分かった。従って、LED照射条件は、高い殺菌性と極めて高い毒性を示さなかった照射距離2cm、30分間照射と決定した。 生細胞率85%から100%に近づけるための工夫は、抗酸化性化合物分岐型水溶性ポリマーにある。所期の計画通り、水溶性ポリマーの合成が進行中であり、現在、ポリマーと抗酸化性化合物とのリンカーとなるペプチドを合成および精製し、300mg取得したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LED照射による殺菌効果と細胞毒性評価については概ね計画通りに進んでいる。遅れている点は、細胞毒性に関しては、LED照射による細胞増殖への影響が検討できていないことである。合成に関しては、水溶性ポリマーの合成の進行が遅れている。ポリマーと抗酸化性化合物のリンカーに用いるペプチドを、精製品として大量に取得する必要があったため、その合成と精製に労力と時間を要した。現在、300mg精製品として取得できているので、このペプチドを用いポリマー合成にシフトする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.抗酸化性化合物をレスベラトロールとし、これを水溶性ポリマー主鎖からペプチド鎖で分岐させた所期の計画にあるポリマーを早急に合成する。合成物の物性(分子量測定)は外注により進める。細胞へのこのポリマーの添加が、LED照射における生細胞率をどの程度向上させることができるか検証する。2.上記結果において生細胞率の向上が認められた場合、微生物と細胞が混在した系において微生物殺菌が可能であるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
水溶性ポリマーを合成するための小型油回転ポンプ(TGK GLD-202B 20万円)、細胞培養規模を拡張するためにCO2インキュベーター(サンヨー MCO-5AC 77万円)と細胞凍結容器(三商 41-0032 18万円)、さらに恒温ヒーター(タイテック SM-05N 8万円)を平成24年度初期に購入する。残金は、水溶性ポリマーの創成におけるポリマー合成に係る試薬、有機溶媒の購入、その物性を測定するための外注費に充てる。そして、細胞培養や微生物培養においては消耗品を多く使用するので、これら費用に予算を充てる。また、既に9月に開催される学会発表(東京)登録をしているので、その参加費、旅費にも充てる。
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