研究課題/領域番号 |
23750218
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 琢麿 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00401175)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 液晶半導体 / ドナー‐アクセプター / ナノ構造 / 有機太陽電池 / 両極性電荷輸送 / 分子内電荷移動 / ミクロ相分離 / π共役 |
研究概要 |
高効率な光エネルギー変換システム(有機太陽電池)の活性材料への応用を指向し、新規の液晶半導体材料を設計・合成した。具体的には、電子ドナー部位とアクセプター部位を適切に空間配置して一分子中にハイブリッド化した「ハイブリッド型液晶半導体」を精密に合成することができた。これらの新規化合物は、有機溶媒への高い溶解性を示すとともに、ドナー・アクセプター構造に起因する分子内電荷移動により、幅広い可視光領域での吸収特性を示すことを明らかにした。化合物のHOMOおよびLUMOレベルを実験的手法および計算化学の両面から検討し、半導体材料として適切なエネルギーレベルを有することがわかった。また、ドナーとアクセプターの化学構造と電子物性の関係性について系統的な知見を得ることができた。さらに、溶液プロセスを用いて薄膜の作製を行い、そのモルフォロジーをプローブ顕微鏡観察、およびX線回折測定等により多角的に評価を行った。その結果、薄膜表面は十分な平滑性を有するとともに、高い秩序性・結晶性を保持した均質な薄膜が得られていることがわかった。以上のことから、液晶半導体の特性を活用することで、電荷輸送に有利なナノスケールのチャンネル構造を自発的に薄膜中に形成できると考えられる。さらに、溶液プロセスを用いて半導体薄膜を基板上に製膜し、この上に陰極を蒸着して予備的な有機太陽電池を作製し特性評価を行ったところ、良好な光電変換特性を示す材料系であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機薄膜太陽電池の活性材料として機能する液晶半導体分子の精密合成に成功し、材料の基礎物性評価を行うことができた。特に、電子ドナー・アクセプター部位を組込んだハイブリッド型液晶半導体材料を創製し、優れた可視光吸収特性および薄膜形成能を有することをこれまでに明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り次年度には、合成した液晶半導体材料を活性層に用いた有機薄膜太陽電池を作製し、特性評価を進める。予備的知見により、太陽電池として機能することを確かめており、今後は素子構造の最適化やプロセス開発により、高効率化を目指して研究を行う。特に、液晶半導体材料の化学構造‐基礎物性‐光電変換特性の相関関係を明らかにできるよう検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、主として、有機半導体材料の合成のための試薬品類、ガラス器具・実験器具の購入および、学会参加費・旅費に充当する。
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