研究課題/領域番号 |
23750221
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
南部 典稔 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (40329214)
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キーワード | 有機フッ素化合物 |
研究概要 |
本研究では、リチウム電池用の溶媒として有機フッ素化合物を使用するための基盤となる各種特性評価を行うことを目的とする。フッ素原子の導入個数および基本構造の違いが、有機フッ素化合物の物理的性質や化学的性質、有機フッ素化合物を溶媒とする電解質溶液の特性ならびに電池の特性に及ぼす影響について系統的に検討する。 平成24年度は、1-エトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(EMEE)、そのエチル基の片末端にフッ素原子を1個導入したモノフルオロ体(FEMEE)、3個導入したトリフルオロ体(TFEMEE)の種々の特性を検討した。モノフルオロ体の場合、水素原子とフッ素原子が同一の炭素原子に結合している。モノフルオロ体の物質量濃度、質量密度、比誘電率、屈折率、粘性率は、対応する無置換体のものよりも高かった。これらの特性には、双極子モ-メントの増加に基づく極性効果が現れていること以外に、CF-H…O=CやC-F…H-Cで表される弱い水素結合の形成が影響していると考えている。 モル質量の高いトリフルオロ体の粘性率および質量密度は、無置換体のものよりも高かった。しかし、これらの動粘性率は、特に高温側において無置換体のものに近かった。順序が逆転することはなかったが、モル質量の影響の小さい動粘性率における差のほうが、粘性率における差よりも小さかった。粘性率は分子間力に基づく内部摩擦を表し、電解質溶液中での電解質のイオン移動度を左右する。液体の粘性率はそのモル質量にも強く依存する。液体の質量密度dはモル濃度cとモル質量Mとの積で与えられる(d=Mc)。したがって、溶媒の動粘性率(ν=η/d)に対するモル質量の影響は小さくなると考えられる。 対応する無置換体の場合よりも、トリフルオロ体のエ-テル結合における酸素原子の電子対供与性(ドナ-数)は低く、耐酸化性に優れていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フッ素原子の導入個数が異なる有機フッ素化合物に対して、種々の特性を評価できたため。
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今後の研究の推進方策 |
有機フッ素化合物を溶媒とする電解質溶液の特性を引き続き検討するとともに、リチウム電池の特性も評価する。最後に、研究の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
測定用セル、電極材料、電解質、比較溶媒といった消耗品の購入費用、学会出張旅費、論文投稿費用、論文別刷費用等に充てる予定である。
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