研究概要 |
本研究では、電子ドナー性およびアクセプター性機能団の集積構造を分子レベルでデザインし、高性能な光電変換材料の創製を目指している。本年度は、新奇なヘテロ環構造を有する平面電子アクセプターとしてIndancenetetraone骨格に二重結合を挟んでチオフェン環およびビチオフェン環を導入した化合物群を開発し、詳細な物性と構造の検討を行い、有機薄膜太陽電池への応用を試みた。その結果、サイクリックボルタンメトリと紫外可視吸収スペクトル測定により、これら化合物が、フラーレン誘導体と同様のLUMOエネルギー準位を有し、且つ可視部に大きな吸収を呈することを見出し、キャリア生成・電荷分離に最適な電子構造を持つことを明らかにした。またチオフェン環を導入した化合物においては、インジウムスズ酸化物(ITO)基板上に作製した銅フタロシアニンとの積層膜の斜入射X線回折でout-of-plane方向の測定を行ったところ、格子面間隔が3.34Aに帰属される回折ピークが広角側に観測され、フタロシアニン薄膜上でキャリア輸送に最適なface-on配向をとることを明らかにした。さらに、この化合物の電子輸送材料としての性能を評価するため、ドナー分子に銅フタロシアニンを用いて積層型薄膜太陽電池を作製し、擬似太陽光(AM1.5, 100 mW cm-2)照射下、大気曝露せずに太陽電池の評価を行ったところ、短絡電流密度(Jsc)= 1.07 mA cm-2, 開放端電圧(Voc)= 0.55 V, フィルファクター(FF)= 0.30, 変換効率(PCE)= 0.18 %の性能が観測され、新しい電子輸送材料の構造モチーフを提示した。
|