ガス漏れ検知など安全安心を担保するガスセンサにとって、高感度や高選択性とともに高信頼性が実用上の重要な性能因子である。表面化学反応を利用するガスセンサでは、触媒が感度や選択性の発現を担っており、実環境下で起こる触媒の被毒は、センサの特性劣化を起こす深刻な問題となっている。 H23年度の結果から、HMDSO被毒は触媒へのSiO2の物理被覆ではなく有機物の吸着による触媒活性の失活が原因である可能性が明らかとなった。H24年度は、あらかじめHMDSOへの曝露を行った接触燃焼式マイクロガスセンサ上に集積化した直径0.6mmの触媒(Pt/γ-Al2O3)に対して蛍光法によるXAFS測定を行った。その結果、ガス流通下での応答信号とデバイス上の触媒からのXANESスペクトルを同時にモニタリングすることに成功した。 一方、デバイス上での調製条件と同条件で調製したPt/γ-Al2O3に対し金属分散度測定を行ったところ、焼成条件により分散度が大きく異なっており触媒表面へ不純物が残存している可能性が示唆された。そこで、デバイスに集積化する際に使用する有機物含有触媒(PtCl4/γ-Al2O3)ペーストについて、高温でのPt挙動を透過法によるin situ XAFSで観察した。その結果、触媒をデバイス上へ集積化する際に用いる分散剤や溶媒に含まれる炭素が400℃で焼成するまで触媒表面に多く残存していること、残存炭素が触媒活性を阻害していることが明らかになった。 高感度なマイクロガスセンサを作製するためには、触媒をデバイスの決まった位置へ決まった形状に精度よく集積化する必要があるうえ、制約された焼成温度で調製する必要がある。今回の結果は、高い信頼性を示すガスセンサの開発には、ガスセンサにおける触媒被毒は外的要因だけでなく、デバイス上という特殊な環境下での触媒調製法を検討する必要性を示唆する。
|