研究課題/領域番号 |
23750231
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 千尋 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (80581371)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
ポルフィリンは広いパイ共役系を有する大環状芳香族化合物であり、可視領域に強い吸収帯を有する色素である。一方で芳香環の縮環により共役系を拡張したポルフィリンは、吸収が長波長シフトすることで近赤外での吸収が可能となる。近赤外光は人体に無害であることから光線力学療法などへの応用が期待されている。カルバゾール誘導体は光化学、超分子化学的に、また触媒の配位子などとして注目されている。一方でカルバゾールはベンゾ環が縮環した拡張系ピロールであることから、カルバゾールを出発物質として新規な縮環型ポルフィリノイドの開発が可能と考えられるがそのような報告例はほとんどない。そこで本研究ではカルバゾール骨格を有する四重ベンゾ縮環型ポルフィリノイドを合成することで、近赤外吸収色素の開発及び、新たなポルフィリン合成法の開拓を行なうことを目的としている。 前年度で開発したカルバゾール骨格を有する環拡張チアポルフィリン、及びカルバゾールとインドロン骨格を有するポルフィリノイドとその金属錯体について論文発表を行った。本年度の研究では新規核置換体としてカルバゾール骨格を有するセレナポルフィリンの開発に成功した。分光学測定、電気化学測定、計算化学によりその電子状態を明らかにし、論文発表を行った。またカルバゾール骨格を有するチアポルフィリンの周辺部修飾としてフェニルエチニル基及びフェニルエチニルフェニルエチニル基を導入したところ、フェニルエチニル基導入により共役系の拡張が確認されたが、フェニルエチニルフェニルエチニル基を導入した場合それ以上の変化は確認されず、置換基効果とその飽和を明らかにした。現在論文投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はトリアゾールで架橋したカルバゾール二量体及びその金属錯体の物性評価を行う予定であったが、その合成が困難であったためやや遅れていた。しかし計画を変更して行ったセレノフェンで架橋したカルバゾール二量体についての研究が大きく進展したたため、一年間を通しての達成度は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度にトリアゾールで架橋したカルバゾール二量体及びその金属錯体の物性評価を行い国際会議にて発表する予定であったが、その合成が困難であったため、計画を変更し新規核置換型ポルフィリノイドとしてセレノフェンで架橋したカルバゾール二量体などの合成と物性評価を行なうこととし一定の成果を得た。このため本年度において進展したカルバゾール骨格を有する核置換型ポルフィリノイドの開発を継続して行い、またこれまでの成果に関しての論文発表と国際会議での発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規核置換型ポルフィリノイドの開発を継続して行うこと、及びこれまでの成果に関しての論文発表と国際会議での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとする。
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