研究課題/領域番号 |
23750236
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増野 敦信 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (00378879)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高屈折率 / 低分散ガラス / レンズ / ガラス構造解析 |
研究概要 |
本研究では,無容器法によってTiO2,Nb2O5,Ta2O5などこれまでガラス化しないとされていた酸化物を主成分としたガラスを合成し,その光学特性の評価と構造解析を行った.まずはNb2O5系を中心として展開した.La2O3-Nb2O5-Al2O3三元系についてはガラス化範囲の決定,熱物性,光学特性の測定結果から,Al2O3が屈折率低分散化に効果があることを定量的に明らかにした.また,優れた熱安定性を示す組成もこの三元系において見いだした.La2O3-Nb2O5-Ta2O5系ではTa2O5を主成分としたガラスの合成に成功した.Al2O3添加系と異なり,Ta2O5添加による屈折率低下は抑えられた.これはO2-のイオン性の低下を抑えられたことに依ると結論づけた.さらにこの系にフッ素を導入することに成功した.これは,無容器法による酸フッ化物ガラスの合成の初めての例であり,無容器法の可能性や,工学材料としての応用を広げるという意味で,注目を集めた.また,La2O3-TiO2-ZrO2(HfO2)を中心としてガラス化範囲を明らかにし,屈折率などの光学特性を明らかにした.構造解析からは,このようなイオン性の高い酸化物ガラスは,従来のガラス形成則から大きく逸脱していることがわかってきた.応用の観点からは,本研究で合成するガラスはいずれも超高屈折率というだけでなく,従来のガラス系では見られないほどの小さい波長分散性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で示した組成については,すでに合成が終わり,ガラス化範囲を明らかにすることが出来た.それらのガラスについて熱物性,光学特性の測定も終了した.一部の重要な組成に関しては,放射光X線や中性子回折実験も行い,現在解析中である.ガラス構造をシミュレーションすることで,3次元可視化に成功しており,本研究で対象とする物質のガラス形成則について,新しい知見が得られてきている.また,それ以外でも特に酸フッ化物ガラスの合成に成功している.以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度購入した密度計を用いることで,数多くの新ガラスについて物性と構造の相関が明らかになりつつある.今後はさらなる新組成のガラス合成を目指していく.また,分子動力学に基づく計算から,ガラス中の原子配列を導出し,これまでに得た回折実験の結果と比較する.これによって,原子レベルでのガラス形成則を明らかにする.放射光X線回折実験では,ガラスだけでなく,深い過冷却の液体についてデータを取得する.
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次年度の研究費の使用計画 |
すでに十分な基礎データは得られているので,次年度は国際学会での発表をいくつか行う予定にしている.そのため,海外旅費を計上する.また,さらに多彩な元素を導入するために,試料代も計上する.
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