本研究課題では次世代の電気化学的エネルギー変換デバイスに必要なアニオン伝導性無機固体電解質である層状複水酸化物(Layered double hydroxide: LDH)のイオン伝導性を向上させるため、層状複水酸化物のイオン伝導メカニズムを明らかにすることを目的とする。そのため、層状複水酸化物の化学組成とアニオンのキャリア密度及びイオン伝導に対する活性化エネルギーを系統的に調べ、それらの相関性を明らかにする。これにより層状複水酸化物のイオン伝導性向上に対する設計指針を与えることを目的とする。pHを精密に制御した共沈法により仕込み組成とほぼ同組成のLDHをマグネシウム-アルミニウム系、マグネシウム-ガリウム系、およびニッケル-アルミニウム系において合成することに成功した。得られたLDHを用いて、交流インピーダンス法によりイオン伝導度を算出したところ、三価カチオンの組成比が増えるに従って直線的に伝導度が上昇するのではなく、限られた組成比においてのみ急激に伝導性向上が見られることが分かった。カチオン組成の変化に対して、LDHの形態や表面積にはほとんど変化が見られなかったことから、ホスト層である水酸化物レイヤー中の金属カチオンが特異的な配列を示す場合に高伝導相が出現すると結論づけた。これらの結果は、水酸化物イオン伝導性を示す固体イオン伝導体の伝導性向上のための設計指針となりうる。
|