最終年度は、アルコール溶媒中でのイオン交換において、カルボン酸塩やスルホン酸塩とカルボン酸との比較、カルボキシル基と他の官能基をもつ二官能基の化合物や、複数のカルボキシル基をもつ化合物について主に検討し、構造と反応性の関係について考察した。 カルボン酸塩やスルホン酸塩は、アルコール溶媒中で炭酸型層状複水酸化物とイオン交換反応はほとんど進行しなかった。しかし、硝酸型層状複水酸化物とのイオン交換反応は、水溶媒中で進行するとともにアルコール溶媒中でも進行した。従って、カルボン酸は、水溶媒中で硝酸型層状複水酸化物と又はアルコール溶媒中で炭酸型層状複水酸化物とイオン交換し、塩の場合には、水溶媒中もしくはアルコール溶媒中で硝酸型層状複水酸化物とイオン交換することが明らかになった。 二官能基を有する化合物として、メルカプト基、ヒドロキシル基、アミノ基、フェニル基、ニトロ基、ハロゲン(臭素、塩素)を有するものを選んだ。これらとアルコール溶媒中での炭酸型層状複水酸化物とのイオン交換は、アミノ基以外で進行した。これは、アミノ基がカチオン性であるためと示唆される。また、ハロゲンの場合には、予想に反して、その層間距離はハロゲンイオンを含む層状複水酸化物の値と同じであり、イオンクロマトグラフィーによってもハロゲンイオンが層間に含まれていることが確認できた。従って、アルコール溶媒中でハロゲンの脱離が起こり、カルボン酸の方ではなくハロゲンイオンが炭酸イオンと交換されたといえ、これまでにない珍しい結果となった。 複数のカルボキシル基を有する化合物の場合、メタノール溶媒中の炭酸型層状複水酸化物との反応では、カルボキシル基の数が多い方が交換量は多い傾向が見られた。 これらの結果から、新たな複合体合成において、層状複水酸化物の型、溶媒、ゲスト化合物の構造との最適な組み合わせを予想できた。
|