本研究では、研究テーマとして「リチウム電池用電極材料の二相共存反応における核発生と相境界移動メカニズムの解明」を設定し、界面が核発生・成長メカニズムに与えるを明らかにすることにより、高速Li脱挿入を可能とする材料設計の指針を確立することを目指して研究活動を行った。前年度は、核発生、相成長のメカニズムを電気化学的に探るためにモデルの構築を行い、2相共存状態におけるリチウムイオン挿入は、Li-poor相へのイオン拡散とLi-rich相の核発生・成長に支配されるというモデルの下で、Fickの拡散方程式(イオン拡散)とScharifker-Hillsモデル(核発生・核成長)を複合した電気化学応答関数を求め、ポテンシャルステップを印加した際の電流応答を導出することに成功した。そこで、平成24年度は、得られたモデルの実際の系への適用を行った。具体的には、代表的な2相共存の電極材料であるLiFePO4について様々な粒子形態、過電圧印可条件下でのかと電流応答を測定し、モデルによる解析を行ったところ、実験結果を再現することができ、モデルが適切に物理現象をモデル化できていることが証明された。また、解析の結果、初期の核発生頻度は過電圧に大きく依存し、過渡電流の振る舞いに大きな影響を及ぼすことが明らかになった。一方、大きな過電圧化においては、速度論効果によるモデルからの逸脱が生じ、更なるモデルの最適化が必要であることが分かった。
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