研究課題/領域番号 |
23750250
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 雄太 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究員 (90392620)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | TEM / STEM / EELS / 微量元素 / 元素分布 |
研究概要 |
本申請課題は、非結晶性・非周期性の低次元構造を有する炭素物質を対象として、分析電子顕微鏡(STEM-EELS/EDS)による高感度分光測定を中心に、とくに第2周期に属する微量異種元素原子の検出とその存在位置の特定を同時に行うことを目的とする。具体的には、含リチウム分子を担持させたカーボンナノチューブやグラフェンにおけるリチウムイオン(Li+)の分布、酸化黒鉛やフッ化黒鉛を前駆体とする膨張化黒鉛中の残留酸素・フッ素原子の分布の可視化に取り組み、物性との相関を検証するとともに、炭素マトリクス中の異種原子のイメージング技術として本手法の確立を目指す。本年度はまず、STEM-EELSによるリチウムイオンの分布測定に着手した。種々の手法によりリチウムを担持もしくは内包させたナノカーボン試料(カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等)に対し、数種類の条件(電子線加速電圧120-30 kV)においてTEM/STEM-EELS測定を実施し、加速電圧とリチウムのEELSシグナル強度の相関など、基礎データの収集を行った。この結果、低加速電圧条件(加速電圧60-30 kV)では、電子線照射によるリチウムの散逸などの試料ダメージが大幅に抑制され、十分な強度でEELSシグナルの微細構造を観測できることを確認した。STEM-EELSによるスペクトルイメージ測定により、ハライドや炭酸塩などリチウムの化学状態の二次元分布を、ナノメートルオーダーで観測することに成功した。また、酸化黒鉛由来のグラフェン試料に対しても、欠陥部位における異種原子(酸素等)の分布を探るため、低加速STEM-EELS実験を開始し、次年度も継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の実績概要のとおり、本研究課題はほぼ当初の研究計画どおりに実施されており、有用な基礎データが得られつつあるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は、新たにフッ化黒鉛由来の膨張化黒鉛やグラフェン試料を使用し、残留フッ素原子の分布測定に着手する。また初年度に開始したリチウムおよび酸素の分布測定も継続し、いずれの元素についても原子レベルの分布測定の実現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に試料作製に必要となる消耗品(試薬、ガス、ガラス器具、電顕関連部品)の購入に充当するほか、成果発表のための学会参加費および旅費として使用する予定である。
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