研究課題
本申請課題は、非結晶性・非周期性の低次元構造を有する炭素物質を対象として、分析電子顕微鏡(STEM-EELS/EDS)による高感度分光測定を中心に、とくに第2周期に属する微量異種元素原子の検出とその存在位置の特定を同時に行うことを目的とした。具体的には、含リチウム分子を担持させたカーボンナノチューブやグラフェンにおけるリチウムイオン(Li+)の分布、酸化黒鉛やフッ化黒鉛を前駆体とする膨張化黒鉛中の残留酸素・フッ素原子の分布の可視化に取り組み、物性との相関を検証するとともに、炭素マトリクス中の異種原子のイメージング技術として本手法の確立を目指した。本年度はとくに、フッ化黒鉛試料の低加速STEM観察を実施し、さらに電顕装置内での試料加熱によるフッ素分布の変化を、EELSおよびEDSによる二次元マッピング測定によって明らかにした。なお、このフッ化黒鉛試料については、加速電圧80kVおよび60kVにおいて高分解能観察による原子レベル構造像の撮影も試みたが、フッ素原子の脱離が速やかに起こり、残留炭素の二次元格子像が観察されたのみであった。今後、試料の照射損傷を低減するための方策として、さらに低い加速電圧(たとえば30kV)がノックオンダメージに対しては有効であると思われるが、ほかにイオン化などによるフッ素脱離の可能性も排除できず、液体窒素温度における低温観察など、観察条件の模索を継続する必要性が示された。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
JOURNAL OF ELECTRON MICROSCOPY
巻: 61(5) ページ: 285-291
10.1093/jmicro/DFS054
CARBON
巻: 50(10) ページ: 3909-3914
10.1016/j.carbon.2012.04.035