研究概要 |
ブロックコポリマーをテンプレートとして用いる際、構造周期を小さくするためにはブロックコポリマーを構成する各成分の重合度を抑える必要があるが、分子量の低下は成膜性の低下を招く。申請者はポリマー構造をマルチブロック構造にすることにより、このジレンマを解決できると考え、本課題ではマルチブロックコポリマーの合成とミクロ相分離構造の調査を行っている。平成23年度の研究では親水性ポリエチレンオキシド(PEO)と疎水性液晶ポリメタクリル酸エステル(PMA(Az))からなる直鎖型トリブロックコポリマー(PMA(Az)m-b-PEOn-b-PMA(Az)m,(m,n)=(15,90),(27,90),(35,90),(78,90),(14,250),(39,250))を合成した。(以後"m-n-m"で記す)得られたポリマーを製膜および熱アニールした後、斜入射小角X線散乱法および透過型電子顕微鏡を用いてミクロ相分離構造の解析を行った結果、全ての薄膜においてPEOがシリンダードメインを形成していた。この結果はPEOの体積分率から考えると特異的であり、液晶の配向がPEOのドメイン構造に強く影響を及ぼすことが示唆された。また、相分離構造の周期性は各ブロックの重合度に強く依存し、15-90-15ではシリンダー中心間距離が10.4nm、ヘキサゴナル配列における周期が9.0nmであった。申請者の研究室で過去に合成したジブロックポリマーの周期構造と比べると、本トリブロックコポリマーでは2倍以上の分子量を持ちながら同レベルの微細なミクロ相分離構造を示す、世界最小周期構造ミクロ相分離構造薄膜への指標となる結果が得られた。さらに、熱分析によりn=90のトリブロックコポリマーではPEOドメインの融点が0℃以下であり、室温においてシリンダーが結晶化することのない、金属ナノ構造体形成に適した構造であることが確認された。
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