研究概要 |
ブロックコポリマーをテンプレートとして用いる際、構造周期を小さくするためにはブロックコポリマーを構成する各成分の重合度を抑える必要があるが、分子量の低下は成膜性の低下を招く。申請者はポリマー構造をマルチブロック構造にすることにより、このジレンマを解決できると考え、本課題でマルチブロックコポリマーの合成とミクロ相分離構造の調査を行った。 平成23年度の研究では疎水性液晶ポリメタクリル酸エステル(PMA(Az), Aブロック)と親水性ポリエチレンオキシド(PEO, Bブロック) からなるABA型トリブロックコポリマーを合成した。合成したポリマーは全て、薄膜状態でPEOシリンダードメインが形成され、過去に合成したAB型ジブロックポリマーと比べると2倍以上の分子量を持ちながら同レベルの微細なミクロ相分離構造を形成することが示された。さらに、n=90のトリブロックコポリマーのPEOドメインの融点は0℃以下であり金属ナノ構造体形成に適した構造であった。 これらの結果を踏まえて、平成24年度はA2B型トリブロックコポリマーおよびA2BA2型ペンタブロックコポリマーなどの分岐型マルチブロックコポリマーの合成に取り組んだ。ジクロロアセチル基を片末端または両末端に有するPEO開始剤を用いて、ATRP法により各ブロックコポリマーの合成を行った。得られたA2B型トリブロックおよびA2BA2型ペンタブロックポリマー薄膜はいずれも垂直配向シリンダーミクロ相分離構造を形成したが、その構造周期性はそれぞれAB型ジブロックおよびABA型トリブロックコポリマーの周期性に類似していた。ジクロロアセチル基ではMAAzブロックの際の立体障害が大きく、全てのハロゲン末端から生長反応が起こっていない可能性が考えられるため、分岐型マルチブロックコポリマーの合成については現在も更なる調査を進めている。
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