研究課題/領域番号 |
23750253
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
廣垣 和正 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00512740)
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キーワード | 超臨界二酸化炭素 / 有機金属錯体 / ナイロン6繊維 / ポリエステル繊維 / 導電性繊維 / 金属複合化 / 耐摩擦性 |
研究概要 |
超臨界二酸化炭素を媒体に繊維へ有機金属錯体を注入した後,熱的あるいは水素と接触させて還元することで,繊維内部に錯体から遊離した金属が析出する.これにより繊維内部に金属を複合化して繊維に導電性を付与する技術の確立とその機構の解明を目的とし,昨年度までに,ナイロン6繊維に対して錯体の注入・分解の工程が繊維内の金属分布および導電性に及ぼす影響を調べ,摩擦耐久性の高い導電性繊維を作出した.本年度は,同手法の汎用性を確認するためにポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)繊維に金属を複合化して導電性の付与を試みた. ナイロン6繊維と同様の方法でポリエステル繊維に金属を複合化したところ,用いたPd錯体の繊維に対する親和性が低く注入量が少ないため,繊維内の金属濃度が低く導電性の付与に至らなかった.ナイロン6繊維への導電性の付与において,繊維にPd錯体を注入する過程で同時に熱分解を引き起こすこと,繊維に金属Pdが担持される.その触媒作用により,繊維表面近傍で錯体の注入と注入された錯体の分解が繰り返し進められ,繊維表面に金属層が形成されて導電性が付与されることを見出していた.そこで,ポリエステルに対してPd錯体を注入した後,水素と接触させ還元することで金属Pdを保持した試料を調整し,その試料に対してPd錯体を溶解した超臨界二酸化炭素を吹き付ける方法を検討した.試料にはPd錯体の注入状態および,金属の複合化構造の評価が容易なポリエステルフィルムを繊維のモデルとして用いた.始めに試料に保持した金属Pdの触媒作用により,次の吹き付け工程で試料へ供給されるPd錯体の還元分解が促進され,試料へのPd金属の堆積が促進された.ポリエステルフィルムにおいても体積抵抗率を421Ω・cm,表面抵抗率を1830Ω/□まで低下させることができ導電性を付与できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はナイロン6繊維に加えて同手法により他の繊維への導電性の付与を検討した.ポリエステル繊維では,ナイロン6繊維と同様の方法で処理しても,繊維内の金属濃度が低く導電性の付与に至らなかった.そのため,試料に対してPd錯体を注入した後,水素と接触させ還元することで金属Pdを保持して,その試料に対してPd錯体を溶解した超臨界二酸化炭素を吹き付ける金属複合化方法を検討した.モデル試料としてポリエステルフィルムに金属を複合化し,体積抵抗率で421Ω・cm,表面抵抗率で1830Ω/□まで低下させ導電性を付与できた.他にもアラミド繊維および,ポリアリレート繊維への同手法による導電性付与を検討していたが,繊維が高結晶性であり金属錯体の繊維内への拡散が困難なことから,今後の研究の対象をナイロン6繊維および,ポリエステル繊維の汎用繊維に絞った.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,研究の対象をナイロン6繊維および,ポリエステル繊維の汎用繊維に絞り,繊維への金属錯体の吸着および,拡散,分解について速度論的に調査する.これにより,繊維内の金属の分布を任意に制御できる手法を確立し,繊維表面の金属化率を高めることで,繊維へのより高い導電性の付与を目指す.また,摩擦耐久性の高い導電性繊維を作出できたことから,その応用の可能性や用途に応じた物性の制御方法の確立を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたフロー型装置による試料作製をバッチ型装置による試料作製に変更したため,金属錯体を始めとする試薬類の使用量が少なく,またそれに付随して試薬調整に用いるガラス器具類の使用が少なかったため,消耗品費に残額が生じた.また,試料観察において電界放出形走査電子顕微鏡を使用する予定が,一部,一般的な走査電子顕微鏡での観察で十分であったため,装置使用料が低額となり,分析機器使用量に残額が生じた. 次年度の研究費は,H25年度に引き続き進める,超臨界二酸化炭素媒体中での繊維内への有機金属錯体の吸着および拡散,還元による金属化挙動の解明および,さらなる導電性の向上に必要な実験消耗品(繊維,有機金属錯体,高圧装置消耗品など)購入費および,分析器使用料(透過型電子顕微鏡,走査型電子顕微鏡,X線高電子分光分析装置,誘導結合プラズマ発光分析装置など)に使用する.また,研究成果の公開および,情報収集のために,繊維系学会が主催する研究発表会へ参加するための旅費に使用する.
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