研究課題/領域番号 |
23750255
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻本 敬 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90425041)
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キーワード | バイオマスプラスチック / ポリヒドロキシアルカネート / 結晶核剤 / 可塑剤 |
研究概要 |
近年、環境問題に対する関心が高まるにつれ、高分子分野においても環境調和型高分子材料の開発が切望されている。しかし、植物資源から合成されるバイオマスプラスチックの普及には未だ解決しなければならない問題が数多くある。本研究では植物原料からなる分岐状バイオポリマーを合成し、菌産生プラスチックであるポリヒドロキシアルカネート(PHA)の普及の課題となっている迅速、かつ高効率な結晶化に対応できる添加剤に応用することを目的としている。 分岐状バイオポリマーは開始剤として主に水酸基を有するヒマシ油を用いて合成した。本合成においてはヒマシ油中に存在する二級水酸基が開始点として重合反応が進行し、ヒマシ油と乳酸の混合比を変化させることで生成する分岐状バイオポリマーの分子量や熱物性の制御が可能であった。 上記で合成した分岐状ポリマーをPHAの一種であるPHBVに添加したところ、PHBV単独や直鎖状ポリ乳酸を添加した場合には10℃/minの冷却条件では結晶化せず、5wt%の分岐状ポリ乳酸を添加した場合のみ約60℃に大きな発熱ピークが見られ、結晶化が進行していることがわかった。本結果は分岐状ポリマーがPHBVの結晶化を効果的に促進したことを示唆するものである。また、分岐状ポリマーによるPHBVの結晶化促進作用は分岐状ポリマーの分子量に依存し、ヒマシ油と乳酸のモル比が1:100の分岐状ポリマーを添加した系において効果が最大となった。また、偏光顕微鏡観察を行った結果、分岐状ポリマーの添加によりPHBVの結晶径が著しく減少しており、分岐状ポリマーが一次核の形成を促進していることが確認された。更にポリ乳酸に分岐状ポリマーを添加した場合においてはポリ乳酸の可塑剤として作用し、分岐状ポリマーがバイオプラスチック用添加剤として大きな可能性を秘めていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒマシ油をコアとする分岐状ポリ乳酸を合成し、菌産生ポリエステルの結晶核剤として作用することを明らかとなった。また、開発した分岐状ポリマーをポリ乳酸に添加した際には可塑化効果を発現し、バイオマスプラスチック用添加剤としての可能性も見出されているため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで分岐状バイオポリマーの添加によりポリヒドロキシ酪酸(PHB)やヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸との共重合体の結晶化が促進することが確認された。しかし、共重合組成や分子量の異なる菌産生ポリエステルにおいては結晶化促進効果が異なることが新たに判明した。そこで結晶核剤構造のチューニングを行い、多様な菌産生ポリエステルに適応可能な結晶核剤を開発する。また、ポリ乳酸などの他のバイオマスプラスチックへの添加効果も調べ、高分子添加剤としての幅広い応用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
共重合組成の異なる菌産生ポリエステル、及び分岐状バイオポリマーを合成するための有機試薬類、機能評価用の消耗品を購入する。他に成果発表のための旅費に当てる。
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