研究課題/領域番号 |
23750260
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
石井 淳一 東邦大学, 理学部, 講師 (30585930)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ポリイミド / 低弾性率 / 難燃性 / シロキサン / モルフォロジー / 絶縁材料 / 接着性 |
研究概要 |
平成23年度の研究実績は、次の2点である。まず1点目として、低弾性率化と難燃性の両立について記載する。従来の樹脂設計において低弾性率化と難燃性を両立させることは、非常に困難であったが、ポリイミド(PI)に結合エネルギーの高いシロキサン結合を有する柔軟成分を導入し、リン含有芳香族ジアミンとを共重合させることで、弾性率1.25 GPa、最高の難燃レベル(UL-94,V-0)を達成できた。残念ながら、目標値である弾性率0.1 GPaには及ばなかったものの、次に述べる2点目の研究成果から、低弾性率化への有効な手段を見出すことができた。具体的には、PIを構成するシロキサンからなるソフトセグメントと芳香族ユニットからなるハードセグメントのそれぞれのブロック鎖長を精密に制御(ブロック操作)することで、PIフィルムのモルフォロジーを変化させ、弾性率を飛躍的に低下させることに成功した。その効果は、同じ化学組成でブロック操作をしないランダム共重合体に比べると弾性率を約1/4にまで低下させることができる。走査型電子顕微鏡(SEM)およびSEM-エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いてフィルムのモルフォロジーを観察すると、50 μm以下の微細な海島相分離構造が確認できた。「海」にあたる連続相は、SEM-EDXよりシロキサンからなるソフトセグメント、「島」部分はハードセグメントと帰属できた。動的粘弾性測定からガラス転移温度が室温以下であることからも連続相がフィルム全体の弾性率を低下させることに寄与していることが判明した。更に、この特有なモルフォロジーは銅箔表面との接着強度をも高めた。接着強度は、ランダム共重合体に比べ約2倍に高められる。この効果もまた、連続相が重要な役割を果たしているものと考えられる。以上、2つの成果を更に発展させ目標物性を達成して電子部品に使用される絶縁材料への応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で設定した諸特性(低弾性率化、難燃性、接着性)を達成するための分子設計の知見を平成23年度検討によって得られた。したがって、おおむね順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究成果を基に、平成24年度は、目標物性(低弾性率化0.1 GPa以下、難燃性V-0、接着性1 kgf/cm以上)を達成し、当初計画通り、微細加工性について検討を進めていく。具体的には、難燃性を更に高めるために高リン含有率モノマー合成を行うとともに、溶液加工性(高固形分濃度)を改善し、微細加工を可能にする樹脂を設計する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として使用を計画している。具体的には、重合用原材料(ジアミン、酸二無水物、溶媒、触媒等)、ガラス器具(反応容器、保管容器、蒸留容器等)、分析用消耗品(熱分析用アルミパン等)、合成用窒素ガス、水素ガスである。
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