研究概要 |
本研究では環境適合性タイヤ材料を目指した末端官能基化エラストマーの触媒的合成(触媒効率 = 300%程度)を目的とした.具体的には,ポリマーの一次構造を高度に制御できる錯体触媒を用いて,イソプレンの立体特異性・位置選択性重合を官能基化しつつ触媒的に行う.上記目的を達成するため,理化学研究所で開発された非メタロセン型イットリウム錯体をボラン化合物で活性化した触媒系にフェニルシラン(連鎖移動剤かつポリマー末端官能基化剤として使用)を添加してイソプレン重合を行なった.この結果,本触媒系はフェニルシラン存在下においても触媒活性は高く,生成した1,4-cis-ポリイソプレンは極めて狭い分子量分布(分子量分布値 < 1.13)と99%の1,4-cis構造を示した.さらに,本系で多段階重合を実施したところ,1,4-cis特異的リビング重合性が確認できた.しかし,触媒効率は55%程度と低く,目標値(300%程度)は達成できなかった.さらに,研究期間中に官能基化ポリマー末端の確認ができなかった.本研究は引き続き検討していく予定である. 一方,本研究に関して環境配慮型エラストマー合成という観点からも検討を進めた.余剰留分であるペンタジエンをモノマーに用いてポリイソプレン代替材料が合成できれば,環境負荷低減になると考えた.その結果,ペンタジエンの精密構造制御重合に成功した.具体的には,低温から室温の広い温度範囲でリビング重合の進行を確認した.さらには,生成ポリマーの立体・位置選択性を99%制御できた.
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