ガン細胞に特異的に相互作用することが知られている二種類のTHPを用いて、ガン細胞への特異的な遺伝子導入効率を調べた。具体的には、シルク-poly(L-lysine)-THPトリブロック構造を有する融合ペプチドを合成し、プラスミドDNAと混ぜ合わせることで直径約143nm、表面電荷+13.8 mV程度のコンプレックスを得ることができた。このコンプレックスはほぼ細胞毒性を示さず、また遺伝子導入効率は低いものの、特異的に癌細胞にのみ遺伝子導入することにin-vitroおよびin-vivoの系で成功した。 ガン細胞特異的な遺伝子導入効率の更なる向上を目指して、融合ペプチドとプラスミドDNAの複合体表面におけるTHPの存在比率を上げることを試みた。シルク部分の分子量を6分の1に、ポリリジンの部分を3分の1に低下させ、相対的にTHPの比率を高めた。その結果、In-vitroにおける遺伝子導入効を更に向上させることに成功した。この複合体が細胞に取り込まれる過程を走査型電子顕微鏡で観察した結果、ガン細胞へは複合体が吸着し、比較的短時間で取り込まれるのに対し、健常細胞へは吸着せず、取り込まれる複合体の数が圧倒的に少ないことが明らかとなった。 以上の結果から、ポリリジン配列によりプラスミドDNAとイオンコンプレックスを形成し、THPの存在比および融合ペプチドの配列を工夫することにより劇的に遺伝子導入効率を向上させられること、および癌細胞への特異的な導入が可能であることが明らかとなった。
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