半導体層に有機材料を用いた有機電界効果トランジスタ(OFET)は、薄く・軽い・曲がると言った特徴を生かし、フレキシブルデバイス開発の鍵として期待されている。爆発的な産業展開を実現するためには、OFET作製の低工程化により、汎用デバイスとして普及させる必要がある。有機半導体として広く知られているルブレンは、結晶方位に依存してキャリア移動度異方性があるため大面積に配置された多数の結晶を任意の方向にそろえる結晶の配向制御が課題として残ってる。そのため、電場印加による材料の誘起双極子モーメントを利用した有機結晶の配向制御を組み込んだOFET作製技術の開発を行った。非極性溶媒中で分散したルブレン結晶の電場応答配向を観測した。電場印加にともない電場印加方向にルブレン結晶の長軸(b軸)が向くように40°回転した。配向時間は約1.2秒で回転が始まり、22秒で完全に配向した。配向したルブレン結晶は、電圧を止めてもその場所に配向状態を留めていた。サイズの大きい結晶は低い電場で応答する傾向があった。これは、結晶内で誘起する双極子モーメントが結晶サイズに比例して大きくなるためであると考えられる。SiO2/Si基盤上で、最大の双極子モーメントを有する結晶の長軸(b軸) は、数十秒で電場印加方向に対して平行に回転した。液中で配向した結晶のFETは、b軸方向で0.03~0.07 cm2/Vsであり、ばらつきの少ないキャリア移動度を示した。この配向制御技術は、大面積基板上での単結晶FET素子作製への応用が期待できる。
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