研究課題/領域番号 |
23760003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
志村 玲子 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90420009)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 結晶成長 / X線構造解析 |
研究概要 |
融液成長結晶を戦略的に高品質に作製するために、融液構造の結晶化への影響の基礎的な解析を行うべく、α相とβ相を持つと言われるBa3RE(BO3)3 系を用いて、希土類種類(イオン半径)による結晶と融液の構造変化を理解することを目的としている。地震後の装置の復旧が想定よりやや時間がかかったため、本年度はまず、FZ法で融液成長させたCe添加のA3RE(BO3)3(A=Ba, Sr; RE=Y, Gd)の結晶のシンチレーション特性を測定し、本系の重要性を再確認した。成果は、第5回アジア結晶成長学会(国際学会)で発表を行い、内容はJournal of Crystal Growth誌で現在印刷中である。粉末X線装置が先行して使用可能になったので、研究計画の順序を入れ替え、二年目の前半に行う予定であった実験を先に行った。すなわち、Ba3Y(BO3)3 の結晶晶出相(高温相・低温相)構造の相転移関係を明瞭にするべく、高温粉末X線回折(XRD)装置を使用し測定を行った。Cu管球を使用した通常の粉末XRD装置に、高温セルを搭載して粉末試料を入れた白金パンを装填して、 TG/DTAで確認した相転移温度をまたぐ範囲の温度領域で高温(<1500℃)におけるX線回折図形を得た。この回折図形から、高温相と低温相の結晶構造を確定し、それらの間の相転移について格子定数から議論を行い、第41回結晶成長国内会議で学会発表を行った。固相=固相間相転移におけるイオン半径の役割の理解という点で重要な成果である。引き続いて使用可能になった非晶質用X線回折装置の管球をW管球に変更し、融液構造解析用のEDXD装置の構築を開始した。MCAを使用してエネルギー校正を行い、十分な強度を得るための適切な時間の設定などを現在検討中である。また、アライメント用に接写CCDカメラを購入し、セッティング中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震後のX線装置の復旧順序の関係で、高温粉末X線構造解析を前倒しして先に進行させ、年度後半から融液構造解析のセットアップを開始した。当初、二年目の前半に計画していた実験を前倒して完了し、1年目に計画していた融液構造解析のセットアップを年度後半から開始したが、全体の進捗状況を時間数として考えれば、差し引きほぼ計画通りで進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているEDXD測定のセットアップは順調に進んでおり、このまま計画通り、セットアップを継続して進行させていこうと考えている。セットアップ完了後は、融点から200 ℃上までの温度依存性のデータを揃え、引き続いて、最高温度と融点直上の温度での時間依存性の測定も行う予定である。測定温度間隔と時間間隔については、融液の構造が想定外の変化をする可能性もあるため、粗い間隔での予備実験を行い、その結果を検討して適切な間隔に修正し、実験を行う予定である。これらのデータが得られ次第、解析の総括を行い、論文投稿などで成果を公表する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、構造解析装置の立ち上げ中にアラインメント用接写拡大CCDカメラが新たに必要となり、30万円分の予算をそちらに回すことにした。デモ機を使って動作チェックを行い、仕様をカスタマイズした結果、本体は約25万円で購入できることになったが、受注生産品であるため納品が年度明けになるとのことであった。そこで、予算繰越(基金)が可能であることを利用し、 年度内での納品に拘泥せずに、4月に購入する予定であったが、実際には、年度内にぎりぎりで納品が完了した(繰越可能であることにより、年度内に納品できるものへ妥協して変更することもなく、本当に必要な物品を入手でき、繰越制度に感謝しています)。また、差額の5万円(実際の繰越分)で、ケーブルなど各種カメラ補助部品とCCDからパソコンへの画像読み込みモジュールなどの周辺部品を揃える予定である。次年度の経費では、高温融液を維持するためのセラミックス、加熱用の白金線、熱電対などの融液構造解析用部品の購入を計画している。また、学会発表、投稿論文で成果を公表する経費も計上している。
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