研究課題/領域番号 |
23760004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
沓掛 健太朗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00463795)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シリコン / 結晶成長 / 太陽電池 / 不純物 / 多結晶 / 炭素不純物 |
研究概要 |
太陽電池用の大型多結晶Siでは、結晶成長過程での炭素不純物の混入が避けられない。しかし、炭素不純物濃度の規格・指標の策定や制御法の確立のためには、炭素不純物の取込・析出挙動や固溶および析出状態での電気的影響の研究がいまだに不足している。そこで本研究では、1)バルク多結晶Siの結晶成長過程での炭素不純物の挙動を明らかにする、2)固溶および析出状態の炭素不純物の電気的特性を定量化すること、を目的とした。これにより、多結晶Siを用いた太陽電池の高効率・低コスト化へ向けた炭素不純物制御への明確な指針・指標を示すことができる。 平成23年度では、バルク多結晶Siの結晶成長過程で炭素が混入する機構の解明と炭素濃度の制御精度の向上に取り組んだ。実用サイズ(φ30cm)の多結晶Siインゴットをさまざまな条件で成長させ、成長させた結晶においてインゴット成長方向に沿った炭素・酸素不純物濃度の分布を求めた。さらに結晶成長過程における不純物の取込モデルを作成し、同モデルに基づく不純物分布の計算結果と実験結果とを比較することで、不純物取込機構を明らかにした。さらに同モデルを用いて、取込の各素過程が最終的な多結晶Si中の不純物濃度に与える影響の程度を見積もった。これらの研究成果によって、バルク多結晶Si中の炭素不純物濃度の精密な制御に成功し、また成長装置に関わらず多結晶Siの結晶成長過程で共通する知見を得た。これにより結晶の高品質化に向けた炭素不純物制御への指針が明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2カ年計画のうち、平成23年度では、バルク多結晶Siの結晶成長過程で炭素が混入する機構の解明と炭素濃度の制御精度の向上を実施した。その結果、当初の計画で見込んだとおりの成果を得ることができ、本研究の2つの目的のうち、1)バルク多結晶Siの結晶成長過程での炭素不純物の挙動を明らかにする、ことを達成できた。 具体的な成果として、実用に近い条件で成長した実用サイズ(φ30cm)の多結晶Siインゴットにおいて、結晶成長条件と炭素不純物分布との関係を明らかにし、さらに結晶成長過程での炭素不純物の取込モデルを構築した。このモデルを用いて不純物分布を計算し、実際に成長した結晶中の不純物分布との比較を行なうことで、結晶成長における各要素(結晶成長速度、ルツボの材質・形状・反応速度、結晶重量、雰囲気との反応速度など)が最終的な炭素不純物濃度に与える影響・係数を得た。つまり、炭素濃度制御のための環境の係数を定量的に求めることができ、炭素濃度制御の一般化が可能となった。以上の成果は、成長装置や炉内構造の異なる場合でも共通して適用できるものであり、この分野の進展に貢献できるものである。またこの成果を得て、平成24年度に予定している炭素不純物の特性評価に用いる、炭素濃度を系統的に変化させた試料を作製することが可能となり、予定通りの研究進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究2カ年計画の後半の平成24年度では、本研究の二つの目的のうち、2)固溶および析出状態の炭素不純物の電気的特性を定量化する、ことに取り組む。平成23年度において得た炭素濃度の精密制御に関する知見に基づき、炭素濃度を系統的に変化させたSi結晶を作製する。炭素濃度の範囲としては、5×1015 cm-3 ~固溶限界を超えてSiC析出物が存在する濃度までとする。このSi結晶において、炭素濃度をパラメータとして電気的特性を調べることで、炭素不純物の影響の定量評価を行なう。このとき、比較するSi結晶においては、炭素濃度以外のパラメータ(ドーパント不純物の種類と濃度、金属不純物の種類と濃度、結晶欠陥密度など)を同一にする必要があるため、精密な結晶成長制御によりこれを実現する。電気的特性評価は、太陽電池応用において重要な少数キャリア拡散長(ライフタイム)にて評価する。以上の成果を総合して、太陽電池用の多結晶Siにおける炭素濃度の基準を提案し、本研究の最終目標を達成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では、平成23年度に引き続き、多結晶Siの成長における消耗品を主な物品費として計上している。多結晶Siの成長では、原料Si、Arガス、石英坩堝を消耗品として使用する。また結晶成長以外の消耗品として、耐水研磨紙、ダイヤモンドスラリー、研磨盤などの研磨用消耗品、硝酸、フッ化水素酸などのエッチング用薬品、結晶スライス消耗品を計上している。いずれも、平成23年度の使用実績に基づき、計画的に使用を進める。また旅費として、本研究の成果発表として国際会議1回および国内会議1回、共同研究者との研究打合せとして国内旅費1回の旅費を計上した。
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