研究課題
太陽電池用の大型多結晶Siでは、結晶成長過程での炭素不純物の混入が避けられない。しかし炭素不純物濃度の規格・指標の策定や制御法の確立のためには、取込・析出挙動や固溶および析出状態での電気的影響の研究がいまだに不足している。そこで、1)結晶成長過程での炭素不純物の挙動を解明する。2)固溶および析出状態の炭素不純物の電気的特性を定量化する。ことを目的として研究を行なった。まず、実用サイズ(φ30cm)のインゴットをさまざまな条件で成長させ、炭素・酸素不純物濃度の分布を求めた。また、不純物の取込モデルを作成し、不純物分布の計算と実験の結果を比較することで、不純物取込機構を明らかにした。このモデルは不純物取込の素過程を簡潔に表現したものだが実験結果を良く再現し、これにより取込の各素過程が結晶中の最終的な不純物濃度に与える影響の見積が可能になった。これらの研究成果によって、炭素不純物濃度の精密な制御に成功し、また成長装置によらず多結晶Siの結晶成長過程で共通する知見を得た。すなわち、結晶の高品質化に向けた炭素不純物制御の指針が明確となった。次に析出状態の炭素不純物の電気的特性を調べるため、炭素濃度が高いインゴットを意図的に作製し、析出物周囲の少数キャリア寿命を調べた。ここで非常に興味深い結果が得られた。炭素濃度が固溶限を越えて発生した析出物の多くは、炭素析出物ではなく窒素析出物であった。このことは炭素の析出をトリガとして窒素の析出が発生することを示す。さらに窒素の析出はインゴット中のある1点から開始した後、急速にインゴット全体に広がり、インゴットの電気的特性を低下させた。今後の課題は固溶状態の炭素の電気的特性の解明である。少なくとも本研究での評価においては固溶炭素濃度の違いによる顕著な特性の違いは観察されなかった。このことに関しては、課題として研究を継続する予定である。
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Journal of Crystal Growth
巻: 352 ページ: 173-176
DOI:10.1016/j.jcrysgro.2012.02.004