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2011 年度 実施状況報告書

窒化インジウムバルク結晶成長に向けた選択的な原料分子種生成メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23760006
研究機関東京農工大学

研究代表者

富樫 理恵  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50444112)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードエピタキシャル / 結晶成長 / 窒化インジウム / HVPE / 熱力学解析
研究概要

これまで高品質InN結晶の高速・厚膜HVPE成長に向けた、成長速度及び膜厚の影響については未検討であったため、平成23年度はまず、既存の装置を用い、分子線エピタキシー法で成長したInN/sapphire(0001)テンプレートを用い、Cl2供給分圧の変化によるInN成長速度の影響について検討を行った。その結果、Cl2供給分圧の増加により、InN成長速度が増加することが明らかとなった。これは、InN成長が物質輸送律速に従っていることを示している。さらに、X線回折2θ-ωおよび、φスキャン測定からInN単結晶成長は維持できており、成長速度が大きい場合でも単結晶InN膜の成長が可能であることが明らかとなった。X線回折ロッキングカーブ半値幅から転位密度を見積もるとトータルの転位密度は、高Cl2供給分圧になるにつれて減少し、Cl2供給分圧1.9×10 -2 atmにおいて9×10 9 cm-2であった。以上より、InCl3ガスを高濃度供給することが可能となれば、高品質、高速厚膜InN成長が実現できることを見出した。 しかしながら既存の装置では、原料部において成長に寄与しないInClガスの生成が主であることが問題となっており、厚膜InN成長は未だ実現していない。そこで成長に適したInCl3分子のみを選択的に生成できる反応条件を熱力学解析により探索を行った。具体的には、(1)金属InとCl2ガスとの反応によるInClガスの生成、及びInClガスの不均化反応によるInCl3ガスの選択的生成、及び(2)金属InとCl2ガスとの反応によるInClガスの生成、及びInClガスと追加供給したCl2ガスとの反応によるInCl3ガスの選択的生成について熱力学解析を実施し、原料部の反応メカニズムと反応条件を明らかにした。さらに、計算結果に基づいた原料分子種生成制御機構を有するHVPE装置を設計した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高品質InN結晶の高速・厚膜成長に向けた、成長速度及び膜厚の影響については未検討であったため、MBE法で成長したInN/sapphire(0001)テンプレートを用い、Cl2供給給分圧の変化によるInN成長速度の影響について検討を行った。装置には、原料部にて金属InとCl2ガスとの反応によりInCl3ガスを生成し、成長部にて生成したInCl3ガスとNH3ガス間の反応によりInN成長を行う既存の装置を用いた。その結果、InN結晶成長は物質輸送律速に従うこと、成長速度が大きい場合でも単結晶InN膜の成長が可能であること、転位密度が高Cl2供給分圧になるにつれて減少すること等が明らかとなった。すなわち、InCl3分子を効率的に生成することが可能となれば、高品質、高速厚膜InN成長が実現できるという重要な知見を得ることができた。本成果は学会発表にて報告している。 しかしながら既存の装置では、原料部において成長に寄与しないInClガスの生成が主であることが問題となっている。そこで、研究計画通り、(1)金属InとCl2ガスとの反応によるInClガスの生成、及びInClガスの不均化反応によるInCl3ガスの選択的生成、及び(2)金属InとCl2ガスとの反応によるInClガスの生成、及びInClガスと追加供給したCl2ガスとの反応によるInCl3ガスの選択的生成について熱力学解析を実施し、InCl3分子を選択的に生成できる条件が存在することを明らかにした。さらに、計算結果に基づいた原料分子種生成制御機構を有するHVPE装置を設計した。現在、装置の構築を行っている。平成23年度に実施を予定していた(1)の反応機構を有する装置を用いた、InNの成長実験の実施、及び解析は、装置構築完了後すみやかに行い、高品質InNバルク結晶を得るための原料分子種生成メカニズムの解明を行う。

今後の研究の推進方策

平成23年度までに、成長速度及び膜厚のInN結晶成長に与える影響について検討を行った結果、InCl3分子を選択的に生成することが可能となれば、高品質、高速厚膜InN成長が実現できることを見出した。さらに、(1)金属InとCl2ガスとの反応によるInClガスの生成、及びInClガスの不均化反応によるInCl3ガスの選択的生成、及び(2)金属InとCl2ガスとの反応によるInClガスの生成、及びInClガスと追加供給したCl2ガスとの反応によるInCl3ガスの選択的生成、について熱力学解析を実施し、InCl3分子を選択的に生成できる条件が存在することを明らかにした。これより、計算結果に基づいた原料分子種生成制御機構を有するHVPE装置を設計し、構築に着手した。 平成24年度は、熱力学解析結果に基づいた装置の構築を引き続き行う。装置構築が完了した後は、InNの成長実験の実施、及び解析を行い、高品質InNバルク結晶を得るための原料分子種生成メカニズムの解明を行うことを予定している。 最終的には、原料ガスの導入量、成長前のプロセス、反応管各部の保持温度の検討を通し、原料分子種生成メカニズムの解明を行うと共に、InNのバルク成長の実現を目標とする。さらに、InN成長温度の高温化を目指す。InNは熱的安定性が極めて低く、分解が顕著となる600度以上で成長の駆動力を維持することは極めて難しい。しかし、高品質InN結晶の成長のためには結晶表面での原料分子のマイグレーションが促進される高温が有利である。本申請研究の原料分子種生成制御HVPE法は、InCl3の高濃度供給が可能で、InN成長の駆動力を高温でも大きなまま維持できることが予想される。そのためこれまでに検討例の無い高温領域でInNの成長を行うことが可能になり、InNの結晶品質を飛躍的に向上させることが期待できる。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度は、これまで未検討であった「成長速度及び膜厚のInN結晶成長に与える影響についての検討」を既存の装置で行った。さらに、熱力学解析、および新装置の設計を中心に行った。しかしながら設計に基づいた既存の装置の石英反応管、ガス供給系の大幅な改築は、平成23年度内に実施まで至っておらず、平成24年度に持ち越した。そのため、予定していた既存の装置の改築のための石英反応管類、反応管コネクター類等の予算は平成23年度内に使用せず、平成24年度へ繰り越した。 平成24年度は具体的に、成長装置の構築、および構築した成長装置を用いたInNの成長実験の実施及び解析を行い、高品質InNバルク結晶を得るための原料分子種生成メカニズムの解明を行うことを予定している。現在構築中の成長装置は、これまでに例を見ない原料部が二段構成となった新規構造を有するハイドライド気相成長装置であり、原料分子種生成制御によりInN厚膜結晶の高速成長を実現する。原料部構造がこれまでのInNのHVPE成長装置とは異なるため、既存の装置の石英反応管、ガス供給系の改築が必要である。そのため、平成24年度は平成23年度に購入を予定していた物品とあわせて、消耗品として石英反応管類、反応管コネクター類、高純度インジウム金属、高純度原料ガス(塩素、アンモニア)、原料輸送ガス(窒素、水素)、初期基板(サファイア基板など)等を購入する予定である。その他、全期間を通して調査、国内外の学会参加および発表のための旅費、成果の論文投稿関連費が必要となる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2011 その他

すべて 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [学会発表] InN/sapphire(0001)MBEテンプレート上へのInN HVPEにおける成長速度の影響2011

    • 著者名/発表者名
      山本翔, 東川義弘, 富樫理恵, 村上尚, 熊谷義直, 山口智弘, 荒木努, 名西やすし, 纐纈明伯
    • 学会等名
      第72回応用物理学会学術講演会
    • 発表場所
      山形大学 小白川キャンパス
    • 年月日
      2011年8月30日
  • [学会発表] HVPE法によるInN/sapphire(0001)テンプレート上InN高速成長の検討2011

    • 著者名/発表者名
      山本翔, 東川義弘, 富樫理恵, 村上尚, 熊谷義直, 山口智弘, 荒木努, 名西やすし, 纐纈明伯
    • 学会等名
      第3回 窒化物半導体結晶成長講演会
    • 発表場所
      九州大学 筑紫キャンパス
    • 年月日
      2011年6月17日
  • [学会発表] HVPE法によるInN/sapphire(0001)MBEテンプレート上へのInN成長の検討2011

    • 著者名/発表者名
      山本翔, 東川義弘, 富樫理恵, 村上尚, 熊谷義直, 山口智弘, 荒木努, 名西やすし, 纐纈明伯
    • 学会等名
      第41回結晶成長国内会議(NCCG-41)
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2011年11月3日
  • [備考] 研究成果について、研究室ホームページの成果発信欄(

    • URL

      http://www.tuat.ac.jp/~kumagai/gakkai_H23.html

  • [備考] )を利用して公開している。

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公開日: 2013-07-10  

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