これまでに原料部と成長部の2部からなる従来型HVPE装置の原料部において、高純度金属InとCl2との反応によりInCl3を生成し、成長部にて生成したInCl3とNH3間の反応によりInNのハイドライド気相成長(HVPE)が可能であることを示してきた。しかし、原料部においてInCl3の生成割合は低く、成長に寄与しないInClの生成が主であることが問題となっており、厚膜InN成長は実現していなかった。 そこで、平成23年度では、高品質InNバルク結晶成長を実現するために、(1)従来型HVPE装置を用いた高速InN成長の検討、(2)InCl3分子のみを選択的に生成できる反応条件の熱力学解析による探索、(3)得られた知見に基づいた原料生成部を2段構造とした新規HVPE成長装置の設計・構築を行った。 平成24年度では、(1)前年度に引き続き新規HVPE装置の構築、(2)完成に至った新規HVPE装置を用いたInNの高速HVPE成長の実施・解析を行った。2段構造原料部の1段目に高純度Inを設置し、窒素キャリアガスでCl2を供給しInClを優先生成し、2段目において、再度別ラインからCl2を追加供給してInClをInCl3に高効率で転換した。最終的に成長部にてInCl3とNH3ガスを反応させてInNを成長した。これより、従来型HVPE成長装置を用いた場合の約1/40倍のCl2供給分圧にて同程度のInN成長速度を実現した。さらに、原料供給分圧が低く、成長温度が高いにも関わらず成長速度は12.4 μm/hに達し、InNの高速成長を実現した。 平成25年度は、新規HVPE装置を用いたInN高速成長における(1)成長温度依存性、(2)極性依存性、について詳細に検討し、InNバルク結晶成長に向けた選択的な原料分子種生成メカニズムの解明について重要な知見が得られた。
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