研究概要 |
本課題では,ワイドバンドギャップ新規半導体材料である酸化ガリウム(Ga2O3)の機能開拓に取り組み,以下の研究成果を得た. 1.導電性Ga2O3単結晶基板に対して熱酸化により半絶縁層が形成することを見いだした.また,そのメカニズムが,酸素の拡散モデルで説明できることを実験的に示した.これは,基板の絶縁化やパッシベーション形成などに応用できる技術である. 2.パルスレーザー堆積(PLD)法により,単相の(Al,Ga)2O3混晶薄膜をサファイア基板上にAl組成0.62まで作製した.対応するバンドギャップは4.8~6.3 eVであり,AlGaN系にと同程度のワイドギャップエンジニアリングが実現できた. 3.PLD法によりGa2O3単結晶基板上にAl組成0.83まで単結晶(Al,Ga)2O3混晶薄膜を作製させた.それらのヘテロ界面の容量ー電圧特性は,MISキャパシタと同様であり,この系がヘテロゲートトランジスタに展開できる可能性を示した. 4.導電性Ga2O3単結晶を光電極としてとらえ,水溶液中での電気化学特性を評価した.Ga2O3の価電子帯上端,伝導帯下端の位置を測定し,半導体材料のなかでも特に大きな過電圧を有することを明らかにした.また,深紫外線照射により水分解を達成した.今後,種々の化合物の人工光合成に応用できると期待される. 5.Ga2O3系材料として新たに複合酸化物であるZnGa2O4に着目した.粉末合成の結果から,約5 eVのワイドギャップ半導体であることが知られている.そこで,CVD法によりMgAl2O4基板上に単結晶薄膜を作製した.また,高温成長により過剰なZn種を蒸発させ,化学量論組成薄膜作製を初めて実現した.本材料における薄膜デバイス研究の第一歩となった.
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