本研究課題は ・シリコン・カーボン混晶ヘテロ構造の結晶成長過程における欠陥形成・応力緩和メカニズムの解明 ・高歪み率・良好な膜質をもつ結晶の形成法の確立 ・デバイス中における正孔実効移動度の実測と、電気伝導特性の解明 を目的として行われた。平成24年度は、基板温度・原料ガス流量比を系統的に変化させ、成長層の欠陥形成・応力緩和過程に与える影響を調べ、基板温度・原料ガス流量比の上・下限を実験的に決定した。また、各条件で形成した試料の結晶性を詳細に分析した。この結果、格子歪みだけではなく、格子間位置に存在する炭素原子も歪み緩和過程に関与していることが明らかとなった。また、高歪み率と良好な膜質を同時に実現するため、SiGeなどの材料で有効性が確認されている傾斜組成バッファ法を検討した。欠陥形成の進行を組成傾斜だけで制御することが困難であることが分かったため、膜厚や各層の成長温度を最適化して多層構造を作製した。X線回折測定の結果から、層成長の進行に従って歪み緩和率が増大している様子が確認された。また、TEM像から貫通転位の形成が抑制されており、結晶品質の向上に傾斜組成バッファ法が有効であることが示された。 研究期間全体を通じて得られた成果は次の通りである。(001)基板上に圧縮歪みSi/Si1-xCxを形成するための結晶成長条件を系統的に調べ、結晶性の向上に不可欠である結晶欠陥・応力緩和過程に関する新たな知見を得た。また、圧縮歪みSi層をチャネル層としたp型MOSFETを作製し、動作確認と、正孔移動度の向上を確認した。以上の研究成果に関し、学術雑誌への3件の投稿、国外学会における1件の報告、国内学会における2件の報告を行った。
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