研究課題/領域番号 |
23760016
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
石山 武 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40314653)
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キーワード | シリコン / エルビウム / 赤外発光 |
研究概要 |
ErSiO/Si構造について、これまでに、1200度の熱処理温度により、Erの室温での赤外発光が非常に増大することを見出した。また、熱処理時間依存性では50分程度で発光強度は飽和することがわかった。熱処理により赤外発光特性が改善されるす要因として、ErSiO/Si界面および膜中の欠陥が考えられる。これらの欠陥は、Siからのエネルギー移動によるEr励起の効率に大きく影響すると考えられる。実際に、X線回折測定の結果、ErSiO化合物は多結晶状態にあることがわかった。したがって、ErSiO結晶粒の界面、粒界領域には多種多様な欠陥が存在していることも考えられる。一方、電子スピン共鳴(ESR)により検出された欠陥からの信号は、その後の解析により、異方性を持つことがわかった。また、この欠陥によるESR信号は、過去にバルクSi中のEr、あるいはSiやSiO中の欠陥による信号とは異なるものである。これらのことは、この信号の起源となる欠陥が、Si基板中や、結晶方位がランダムになるErSiOの粒界や界面ではなく、ErSiO結晶層の中に存在することを示している。これらのことより、ESR信号は、ErSiO化合物中のErを直接観測している可能性もある。その場合、今後、Er発光中心に関する様々な情報が得られる可能性がある
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、産業応用上の観点からも有利である真空蒸着法を用いて作製したErSiO/Si構造の赤外発光特性・発光機構を明らかにし、成膜条件の最適化により赤外発光の高効率化を達成し、次世代の基盤技術として期待されているシリコンフォトニクスにおける、Si系赤外発光素子として、ErSiO薄膜を応用することを目指している。これまでに、試料作製条件、熱処理条件の最適化により、安定室温発光するErSiO結晶を形成することができた。また、結晶評価の解析に着手できたことにより、ErSiO化合物の発光中心や発光機構に関する情報を得ることができる見通しができた。このことは、さらに赤外発光効率を高めるためにも重要な情報であると考えられる。また、本研究におけるErSiO膜は多結晶であること、また、非発光再結合中心になると考えられる結晶欠陥も存在していることもわかった。従って、本研究ではこれらの欠陥を処理することにより、さらに発光特性の改善を図れる余地があることがわかった。これまでの、試料作製条件の最適化と、その後の光学測定、結晶評価を通して、ErSiO化合物の微視的な情報を得ること、赤外発光特性を改善することが進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、試料作製条件・熱処理条件の最適化を図るとともに、今後さらに、ErSiOの微細化の検討を行う。現在までの成果として、ErSiO化合物は多結晶で存在することがわかっている。そこで、その結晶粒のサイズを微細化することができれば、より高い発光効率が得られる可能性がある。そのため、試料作製後の結晶化を促進する熱処理の最適化を重点的に検討してゆく。特に、様々な条件下(処理時間・雰囲気ガス)での成膜後のアニール処理による膜の結晶化、界面・膜中欠陥の制御を目指す。また、結晶性評価は今後さらに解析を進め、ErSiO化合物中のEr局所構造等に関する情報を得られるよう、検討を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、蒸着源・Si基板などの材料費や、エッチングに必要な薬品類、アニール処理のための高純度ガス、光学部品(レンズ・ミラー)、その他の実験消耗品(石英ガラス器具等)に使用する。特に、今後は光学評価のについてさらに充実させることを検討し、新しい改良箇所などを追加するための研究費として使用する。
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